米国のスポーツ界を通して見るもうひとつの世界

[ 2016年9月1日 09:15 ]

49ersのQBキャパニック(左)(AP)

 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】スーパーボウルというクライマックスが待っているNFLは9月8日に16年シーズンが開幕。目下、最後のロースター入り(53人枠)を巡ってチーム内でのサバイバルが激化している。ただし競技以外の面でニュースとなる“事件”があった。

 13年のスーパーボウルに先発した49ersのQBコリン・キャパニック(28)は26日に行われたプレシーズンゲーム(対パッカーズ)で、他の選手とは違った行動を見せた。恒例となっている試合前の国歌斉唱の際、ただ1人、フィールドに整列せずにベンチに座っていたのだ。セレモニーを拒否した理由は、一連の警察官による黒人男性への発砲、暴力、射殺事件に抗議の意を示すため。「自分は抑圧されている側に立つ。それはこれからも変わらない」。リオデジャネイロ五輪では男子マラソンで2位となったエチオピアのフェイサ・リレサ(26)がフィニッシュしたときに両手をクロスさせて同国政府による反体制派への弾圧に抗議したが、キャパニックもユニホームを着たまま声をあげた1人だった。

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 NBAファイナルで過去3回の優勝経験があり、今オフにヒートからブルズに移籍したドウェイン・ウェイド(34)は2つ年下の従妹を失った。保釈中だった26歳と22歳の兄弟にシカゴ市内で銃撃されて死亡。標的は別人で間違って撃たれたという不条理な事件で、4人の母親だった彼女は子どもの入学手続きをするために学校に行く途中だった。シカゴ市内では凶悪事件が急増。今年の7月だけで65件の殺人事件が発生しており、これはここ10年の月間件数では最多となっていた。

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 キャパニックを通して米国社会を見ると、華やかなスポーツの世界とは対極にある社会の底辺が顔をのぞかせ、ウェイドを通すと銃社会が抱える負の側面が見えてくる。

 いや、米国のスポーツに接しているとまだまだいろいろなものが形を変えて世の中に訴えてくる時がある。その瞬間こそがもうひとつのハイライト。Unpredictable Scenes of America(予測できない米国の光景)。その「USA」にこれから迫ってみる。(専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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