伊調に国民栄誉賞 女性選手初・五輪4連覇の偉業を評価 

[ 2016年8月26日 05:30 ]

<ALSOK凱旋報告会>所属先のALSOK本社でインタビューに答える伊調

 政府は25日、リオデジャネイロ五輪のレスリング女子58キロ級で金メダルを獲得し、女子個人種目で五輪史上初の4連覇を達成した伊調馨(32=ALSOK)に国民栄誉賞を授与する方向で調整に入った。4連覇の偉業が国民に感動や勇気を与えたと評価した。政府関係者が明らかにした。伊調は同日、海外留学を計画していることを明かし、20年東京五輪への挑戦は明言しなかったものの、現役続行を視野に入れていることも示唆した。

 女性アスリート初、そして日本選手初の五輪4連覇を成し遂げた伊調に対し、政府も動いた。12年に同じレスリング女子の吉田が国民栄誉賞を受賞。その時は五輪3連覇と世界選手権を合わせた世界13連覇が評価されたが、今回は吉田も果たせなかった五輪4連覇を達成した。世界選手権では02年から負けておらず、これまで10度の優勝を誇る。その他の試合を含め03年3月の国際大会で1度負けた後は勝ち続けた。今年1月にロシアでの国際大会で13年ぶりの黒星(不戦敗を除く)を喫するまで189連勝。伊調への授与検討は当然の流れだった。

 この日、伊調は五輪4連覇に対し松野博一文科相から特別表彰を受け「光栄」と表情を緩めたが、さらに国民栄誉賞の可能性があることを聞かされると「光栄ですけど、それは記録(に対して)とかじゃないと思う。私にはまだかな、と」と笑ってかわした。

 伊調は4連覇という結果よりも、内容にこだわっている。日本選手団として解団式、文科相訪問など一連の行事をこなしたあと、夕方には所属先のALSOK本社を訪問。約300人の社員の大歓迎を受け、ホッとした表情を見せたが、口から飛び出したのは、試合内容への不満だった。

 「金メダルを報告できるのはうれしい。でも、ああいう試合は悔しいので早く修正したい」。すぐにでもマット練習を再開したいという“レスリング愛”をアピール。その上で「英語をしっかり覚えたいのもあるし、そういう交流があると日本のレスリングも発展していくと思う」と海外留学の希望を口にした。

 伊調は24歳の08年北京で五輪連覇を達成したあと、一度は現役引退を表明。しかし、すぐに白紙に戻し、1年間のカナダ留学を経て戦線復帰を果たした経緯がある。今回も次の目標は明言していないが、英語圏への留学を経て、満身創痍(そうい)の体のリフレッシュを果たせば、再びマットに帰ってくる可能性は高い。20年東京では国民栄誉賞選手として5連覇を目指しているかもしれない。

 ◆伊調 馨(いちょう・かおり)1984年(昭59)6月13日生まれ、青森県八戸市出身の32歳。中京女大付高(現至学館高)―中京女大(現至学館大)―ALSOK。兄、姉の影響で2歳から八戸クラブでレスリングを始める。高校2年時の01年、クイーンズ杯56キロ級で当時世界女王の山本聖子を破り注目される。五輪は04年アテネ大会から北京、ロンドンと63キロ級で3連覇。世界選手権は10度優勝。1メートル66。

 ▽国民栄誉賞 1977年に野球の本塁打世界記録を達成した王貞治(当時)の功績を称えるため、政府が創設した。首相が授与式で、表彰状や記念品などを贈る。プロ野球元巨人監督の長嶋茂雄氏、映画監督の故黒澤明さん、歌手の故美空ひばりさん、「なでしこジャパン」らスポーツ、芸能、文化などの分野で功績を上げた23人・団体が受賞している。

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