【世界のアスリート】排除すべきか…それでも“彼女”は走り続ける

[ 2016年8月18日 12:35 ]

女子800メートル予選に出場したセメンヤ(AP)

リオデジャネイロ五輪陸上女子800メートル予選

(8月17日)
 陸上女子800メートルの予選。南アフリカのキャスター・セメンヤ(25)が2組に登場すると、スタジアム内は少し張り詰めた雰囲気になった。

 「楽に準決勝に進出したかった。暑かったけれど自然に体は動いた」。このコメントもチームのスタッフが本人の声を録音したものを公開するというプロセスを踏んでいる。特別な配慮が必要なアスリート。それがセメンヤだった。

 アンドロゲン過剰症。女性にも男性ホルモンは存在するがその数値が高くなる症状をこう呼んでいる。国際陸連は昨年、女子選手に対して男性ホルモンの一種、テストステロンの許容範囲を設定。アンドロゲン過剰症の選手が競技に出場するには投薬などでこの数値を下げることを義務づけた。しかしスポーツ仲裁裁判所はその規定の実施を1年先送り。これによってロンドン五輪で銀メダルを獲得しているセメンヤのリオデジャネイロ五輪出場が可能になった。

 世界の反応は「排除すべき」「排除すべきだが彼女の努力は評価すべき」そして「女性であれば認めるべき」の3種類。予選に出場した選手の反応もまちまちだった。

 今季は1分55秒33の自己ベストをマークするなど絶好調。「記録の更新ではなくメダルを獲るために走る」と本人は興味を示さないが、陸上界最古の世界記録となっている1分53秒28(83年=クラトフビロワ)をも視野に捉えた。

 しかし今後走れるレースは今大会の準決勝と決勝の2レースのみになる可能性もある。染色体が異なり「インターセックス(両性具有)」となった選手はどこで戦うべきなのか?その答えをもらえないままにセメンヤは走り続けている。 

 ◆キャスター・セメンヤ 1991年1月7日生まれ、南アフリカ北東部ポロクワネ出身の25歳。09年の世界選手権(ベルリン)の800メートルで金。その後、性別問題で11カ月間、競技から離れる。今年の国内選手権では400メートル、800メートル、1500メートルの3種目を制覇。1メートル78、70キロ。

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