白井 新技決め最高点!「“持ってる系男子”ですからね、僕」

[ 2016年8月17日 05:30 ]

銅メダルを手に笑顔の白井

リオデジャネイロ五輪体操・種目別跳馬決勝

(8月15日)
 種目別決勝の男子跳馬で、白井健三(19=日体大)が新技を決めて銅メダルを獲得した。1本目に「シライ/キムヒフン」より半ひねり多い「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」を決め、2本平均で15・449点をマークし、日本勢では84年ロサンゼルス銀メダルの具志堅幸司、森末慎二以来32年ぶりの表彰台に上がった。新技が国際体操連盟(FIG)から認定されれば、跳馬の「シライ2」と命名される。14日の床運動で4位に終わった“ひねり王子”が、会心の演技で夢舞台を締めくくった。

 進化と真価を示さないまま、夢舞台から去るわけにはいかない。高速でひねり、着地も左足が一歩前に出ただけでまとめた。床運動を含め、5つ目の「シライ」となる新技に成功。「技の名前には興味がない。あの3回半を跳べたことにビックリ。自分でも感動する」。世界大会の跳馬で初めて表彰台に立った“ひねり王子”が、天真爛漫(らんまん)な笑みを浮かべた。

 「メダル獲っちゃいましたよ~。“持ってる系男子”ですからね、僕」。

 14日は金メダル大本命の床運動でまさかの4位だったが、不思議と落ち込まない自分がいた。「全然悔しくなくて」。しかし、闘志に火をつけたのは白井以上に悔しがってくれた内村の存在だった。「航平さんを見ていると頑張らなきゃと思った」。2本の平均点ではドラグレスクと並んだ。同点の場合は、2本のうち高い方の得点を出した選手が上になる。1本目でマークした15・833点は全体トップの数字。“シライ2”が、表彰台への道を切り開いた。

 「(床運動で)負けた分、それ以上のものを取り返した。もう、振り返りたくないくらいのいい実施だった」。今年から本格的に取り組んだ「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」。それまでの「シライ/キムヒフン」から半ひねり増やすだけだったが、全くの別物だった。「向きを変えるだけだと思っていたけど全然違った。膝も怖かった」。6月の全日本種目別ではひねりが足りずに着地。練習を含めてもラインオーバーをせずに立ったことは一度もなかったが、大一番で初めて決めた。

 「3~4秒の跳躍だったかもしれないけど、僕の1年が詰まっている」。

 女子選手のダンスの振り付けを一瞬で20通りも覚え、内村の「リ・ジョンソン」の映像を見て、わずか10分でものにしたこともある。トランポリンで遊んで磨いたひねりのセンスに、イメージを具現化する能力、豊富な練習量が加われば、世界を驚かせるのは必然だった。

 体操界に衝撃を与え続ける白井は24日に20歳になる。「すてきな10代を送れたかな。20歳になっても勢いそのままにいきたい。体操を抜いても凄いと思われるよう、しっかりとした知識や知能を持った人間になりたい」。理想は内村航平。団体世界一に導き個人総合で歴史に残る激闘を制した27歳の姿が、20年東京五輪への道しるべになる。

 「航平さんのインパクトが凄くて。追いつきたい気持ちが強い。言葉じゃ言い表せないくらいの主将だった」。

 苦手種目を克服し、オールラウンダーへ。体操ニッポンの栄光のバトンは近い将来、キングから“ひねり王子”に託される。

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