白井 難技成功しての銅は跳馬で進化した瞬間 金への布石に

[ 2016年8月16日 06:16 ]

白井の跳馬の演技(AP)

 【立花泰則の目】実力者がそろった種目別跳馬で、新技を成功させて銅メダルを獲得した白井は、スペシャリストとして急速に世界での経験値をあげた。種目別跳馬は、団体総合や個人総合と違って、異なる2本の跳躍の得点平均で競うため、高いDスコアを2本そろえ、完成度の高い実施をしなければならない。この銅メダルは、白井が跳馬でも進化した瞬間であり、跳馬のスペシャリストとして次のステージへ突入した。

 それをもたらしたのが、1本目の新技「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」だ。難度を示すDスコアが6・4、世界で初めて成功させた大技は、従来の「シライ/キム・ヒフン」より、ひねりが半回転多い。「シライ2」とも言える新技だが、新技仕様に作り替えなければならず、単純に半回転増やせばいいというものではない、本当に難しい技だ。

 小さなころからトランポリンで培ったひねりの技術を床運動で完成させ、跳馬に転用した。基本の質が高くなければ、新技の成功はない。あらゆる筋肉をミリ単位で駆使しながら体を動かし技を創りあげることで、合理的で無駄のない、美しい技になったと言える。

 この白井の進化は、金メダル獲得への布石とも言える。今回は完成度と安定性を重視したドリッグス(Dスコア5・6)を2本目に跳躍し、実施点(Eスコア)を9・466点にまとめたことが、銅メダルのもう一つの要因だった。Dスコア6・0のロペスも跳躍できたと思うが、1本目の新技に集中したのが功を奏したのではないか。

 つまり、白井にはまだ「のびしろ」がある。上位2人に勝つためには、やはりDスコア6点台の完成度の高い技がもう1本ほしい。種目別床運動でメダルを逃し、跳馬では銅メダル。悔しさと結果の両方を日本に持ち帰ることは、強くなる原動力にもなる。東京五輪に向け、白井のさらなる進化が楽しみだ。(2012年ロンドン五輪男子日本代表監督)

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2016年8月16日のニュース