【メダリストは見た】原田雅彦氏 五輪ゴルフ、分岐点は「20年東京では」

[ 2016年8月16日 10:45 ]

15番でティーショットを放つ池田勇太

リオデジャネイロ五輪ゴルフ・男子最終日

(8月14日 五輪ゴルフコース)
 112年ぶりの五輪復帰として注目されてきたゴルフは、男子が閉幕した。ゴルフ愛好者という98年長野五輪スキージャンプ金メダリストの原田雅彦氏(48=雪印メグミルクスキー部監督)は、4日間の激闘に熱視線を送った。開幕前にはトップ選手の辞退などで話題となり実施意義まで問われたが、本当の分岐点は「20年東京では」と指摘する。その理由は――。

 五輪という舞台に戻ってきたゴルフ、連日観戦していました。片山選手、池田選手、お疲れさまでした。私、実はシーズンオフには数十回ラウンドするゴルフ愛好者です。ゴルフって性格が出るんですよ。私は全く小技が効かず「三振かホームランか」のゴルファー。うちのチーム(雪印メグミルク)の岡部孝信コーチ(98年長野五輪金メダリスト)は緻密で、コースマネジメントにたけたゴルファー。性格というか生き方が出るスポーツだと思います。ジャンプ選手時代と全く同じですもんね。

 最初に目についたのは、普段のツアーではウエアやキャップにたくさんついているスポンサーの名前がなかったこと。シンプルに国名が記されたポロシャツなんか見ると「ああ、五輪でプレーしてるんだなあ」と感じました。私たちのようにスポーツに携わっている者からしても、プロゴルファーって別世界の人のイメージだったんですね。賞金ランキングなんて概念も含めて。それが今回「やっぱりアスリートなんだ」と改めて認識させてもらって、身近な存在になったような気がしています。

 五輪用に新設されたコースということで、プレーヤーの慣れによる有利不利はなかったように思いました。結果は13年全米オープン覇者のローズが金、今年の全英オープン優勝のステンソンが銀。やっぱりメジャータイトルを持っている世界ランク上位の実力者が、最終的に表彰台に上がったんだと思うと興味深かったですね。

 同じように自然条件と戦うスキージャンプはW杯で世界各地を巡るんですが、そこには苦手な台や不利な風に直面することもあるんです。でも、そんな状況で降りかかる“被害”を最小限で抑えて、チャンスを必ずモノにする、という点で総合ポイントの上位者はやっぱり強いんですよ。決して幸運に恵まれた一発屋には届かない領域とでも言うんでしょうか。今回の結果はそういうことなんだろうな、と考えました。

 もう一つ特徴的だなあと思ったのは予選によるカットがない、4日間の試合だったことです。世界選手権シリーズという大会では、こういう形式もあるらしいですが、いつもと違って4日間トータルの試合という視点が必要になると思います。最終日に猛チャージで銅メダルに食い込んだクーチャー選手は見事でしたね。きっと前日までの3日間でつかんだコース攻略のコツみたいなものが、最後に爆発したんでしょう。序盤からメダル圏内で戦っていた選手は、びっくりしたでしょうね。展開のアヤとして非常に面白かったです。

 ◆原田 雅彦(はらだ・まさひこ) 1968年(昭43)5月9日、北海道上川町生まれの48歳。スキージャンプ選手として92年アルベールビルから06年トリノまで冬季五輪5大会連続出場。94年リレハンメルで団体銀、98年長野で個人ラージヒル銅、団体金メダルを獲得。世界選手権でも計6個のメダルを獲得した。現在は雪印メグミルクスキー部監督で、全日本スキー連盟理事も務める。

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