ボルト 9秒81五輪史上初3連覇!宿敵ラスト4歩で抜き去る

[ 2016年8月16日 05:30 ]

男子100メートル決勝、9秒81で優勝したボルト(左から2人目)(AP)

リオデジャネイロ五輪陸上男子100メートル決勝

 男子100メートル決勝はウサイン・ボルト(29=ジャマイカ)が9秒81で制し、同種目で五輪史上初となる3連覇を果たした。強烈な追い上げでジャスティン・ガトリン(34=米国)を0秒08差抑えた。準決勝は2組の山県亮太(24=セイコーホールディングス)が自身が持つ五輪での日本勢最高記録を更新する10秒05をマークして5着。3組のケンブリッジ飛鳥(23=ドーム)は10秒17の7着でともに敗退し、1932年ロサンゼルス大会の吉岡隆徳以来となる日本選手の決勝進出はならなかった。

 10歩目までは最下位。鈍い滑り出しだった。しかし歯をくいしばって加速。38歩目で宿敵ガトリンに並んだ。そして残り7メートル。ついに前に出たボルトは勝利を確信し、胸を2回叩いて最後の42歩目を刻んだ。

 「素晴らしいレース。だから俺はやるといっただろ。決して速くはなかったがうれしいよ」。100メートルで五輪3連覇を達成した希代のスプリンターは両手を横に広げ、リオデジャネイロの象徴、コルコバードのキリスト像を思わせるポーズでブラジルの人たちの心をつかんだ。

 ジャマイカ選手権の決勝を故障で棄権しながら救済措置で五輪代表になった時、犬猿の仲だったガトリンに「米国ならありえない」と陰口を叩かれた。ボルトは「彼は何も分かっていない」と応酬。しかしこの日、ガトリンはスタジアムに姿を現すなり大きなブーイングを浴び、「こんな光景は見たことがない。でも多くの人が何かを訴えたかったんだろう」と感じたボルトは大きな拍手で迎えられた。ガトリンに2度の薬物違反歴があることから「善と悪の対決」と呼ばれた100メートルでの最終決戦。ボルトは多くの人に背中を押されながら、100分の8秒差をつけて世界が注目したレースを制した。

 地元ジャマイカで開催された02年の世界ジュニア選手権。15歳だったボルトは「うまく走れる自信がない」となかなか自宅を出ようとしなかった。母ジェニファーさんは励ましたが効果なし。しかしスタジアムで大声援を受けたとたんにやる気を見せた息子を見て、もう心配することはなくなったという。

 それから14年。「確実に最後」と語った五輪でもボルトは必要なエネルギーをスタンドからもらっていた。五輪トラック種目史上初の3連覇。9秒81は数万人の声が生み出した優勝記録だった。

 ◆ウサイン・ボルト(ジャマイカ=陸上男子100メートル)09年世界選手権の100メートルで9秒58、200メートルで19秒19の世界記録を樹立。08年北京、12年ロンドン両五輪で100メートル、200メートル、400メートルリレーの3種目を制覇。1メートル96、95キロ。29歳。

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