松岡修造氏 “圭の革命”日本のテニスが本当に五輪の仲間入りした日

[ 2016年8月16日 08:40 ]

試合後、笑顔でガッツポーズをする錦織

 【松岡修造氏 愛弟子の快挙熱血分析】これはもう奇跡でしょう。申し訳ないけれども、第2セットのタイブレークを取られた時点で、負けた圭になんて声をかけようか考えていた。

 ただし、トイレットブレークから出てきた圭の姿を見て、僕はジュニアの頃を思い出した。彼は本当に負けず嫌いで、負けたくない気持ちだけでなく、負けないための戦略を考えられる。そういう人だった。

 ナダルは第2セット途中から、守るよりもどんどん攻めてきた。本来は圭が攻撃、ナダルが守備の構図。それが逆転してしまった。これを再逆転するには二つの選択肢があった。一つはやみくもに力任せに打ち込む。もう一つはコートの内側に入ってコントロールしながら攻めること。圭は後者を選択した。これはつらい。
 
 何がつらいかというと、大変な集中力と運動量が必要だからだ。あれだけ疲労した状態で圭はきつい方を選択した。それがナダルにプレッシャーを与えてブレークできた。

 今大会を見ていて、五輪の良さは“国のために戦う”という普段あり得ないモチベーションが湧いてくることだと感じている。圭に話を聞いていても、競泳の萩野さんや体操の内村さんらと同じ選手村で過ごすあのエネルギーって凄いんだと思う。テニス選手はテニス選手に憧れ、テニスの面での強さを学んでいる。それがこの日の最終セットは違った。競泳から体操、全競技の選手の心を力にして戦っている圭がいた。まさにチームジャパン。あれだけ集中して、自分に打ち勝った圭は初めて見た。

 僕はジュニアの強化合宿をあえて他競技の選手と同じ味の素トレセンでやっている。圭が銅メダルを獲ったことで“4大大会よりも五輪で金メダルを獲りたい”と思う選手や子供が出てくるかもしれない。テニスというスポーツに、今までにない革命を起こしてくれた圭。これでテニスが本当の意味で五輪の仲間入りをさせてもらった。

 まだ気づいてないと思うが、圭自身も人生で最も大きなものをつかんだ瞬間かもしれない。一番大事なときに何をすればいいのか、心の中で何を味方につければいいか。これからの全米オープンでもチームジャパン、そして“日本”の支えを感じられる圭になっていくはずだ。 (スポーツキャスター)

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