【世界のアスリート】噴出する“不幸”乗り越え6大会連続メダル

[ 2016年8月14日 12:07 ]

銅メダルを獲得し息子のカーターくんにキスをするキンバリー・ロード(AP)

リオデジャネイロ五輪 射撃女子クレー・スキート(米国キンバリー・ロード)

 射撃女子クレー・スキートに出場したキンバリー・ロード(37)は自分の人生を「オールド・フェイスフル」と表現する。米イエローストーン国立公園にある間欠泉のことだ。4年前のロンドン五輪から次々に噴き上げる人生の熱水。それはリオデジャネイロ五輪でも続いていた。

 12年ロンドン五輪の直前に乳がんと診断され、1万5000ドル(約153万円)もする競技用の銃を盗まれた。さあ渡英しようかと思ったら愛犬が航空券を食べ、夫は旅券を紛失。新しい銃を買ったら、犯人が逮捕されて銃が戻ってきた。

 4年前は金メダル。ただし自分が妊娠しているのは知らなかった。不幸なことに骨盤痛が予想以上に悪化。激痛が走り、歩くことも寝返りを打つこともできなくなった。そして苦労の末に長男を13年5月に出産。しかしその1カ月後、今度は胆のうの摘出手術を受けた。夫も内臓疾患で入院し義父は足を骨折。「地獄だった」と振り返ったのはその後に卵巣膿瘍(のうよう)になった自分のことではなく、6人の友人がいろいろな理由でこの世を去ったためだった。

 12日に行われたスキートの決勝。ロードは3位決定戦でシュートオフ(延長)の末に銅メダルを獲得。「ここ数年の出来事を思いだしてしまって…」と3歳になった息子のカーターくんを抱きしめ感涙に浸った。これで夏季五輪史上初となる6大会連続のメダル獲得。「どん底にいるとこれ以上、悪くはならない…」と開き直ったロードは、艱難(かんなん)辛苦の末に偉大なアスリートの仲間入りを果たした。

 さて問題は間欠泉。いつ次の熱水が噴き出すのかがわからない。現役は続行。しばらく彼女の周囲では“警戒警報”が出たままになるだろう。

 ▼キンバリー(キム)・ロード 1979年7月16日生まれ、米カリフォルニア州出身の37歳。ダブルトラップでは96年アトランタと04年アテネ両五輪で金、00年シドニー五輪で銅。スキートでは08年北京五輪で銀、12年ロンドンで金メダルを獲得。1メートル63、82キロ。

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2016年8月14日のニュース