内村 調和した難度と美しさ 全能力出し切ったベルニャエフとの名勝負

[ 2016年8月11日 11:35 ]

鉄棒の演技を終え、ガッツポーズする内村

 【立花泰則の目】難度と美しさの究極の調和で世界に君臨する内村。難度の高さで挑んだベルニャエフ。お互いにミスがなく、持っている全能力を出し切った素晴らしい名勝負だった。

 ベルニャエフの持ち味は、難度を示すDスコアの6種目合計が内村を0・7点上回る難度の高さだったが、出来栄えを示すEスコアの内村の合計は、ベルニャエフを0・799点上回った。ベルニャエフはEスコアで内村にかなわないため、難度を上げることでキングに挑んだ。これまでは、勝負どころで大過失が出ることが多かったが、この日は大きなミスがなく、最後まで内村を追い詰めた。

 個性のぶつかり合いとなった勝負は、最終的に0・099点の小差での決着となった。最後の鉄棒は6種目の中の1つにすぎず、6種目トータルでの実力の差だった。難度で勝負したベルニャエフは、0・1点ずつのEスコアの小さな減点を積み重ね、難度と美しさの究極の調和を成立させた内村にはかなわなかった。

 それにしても、予選、団体総合、個人総合で計18演技をこなし、その最後の鉄棒を完璧に実施して逆転した内村の精神力は、すごいと言うしかない。最後の場面でも、起きている試合展開を俯瞰(ふかん)して全体を見渡し、自分自身が置かれている状況を客観的に把握していた。そのうえで己が己を乗り越えることに集中しているように見えた。それに加え、この日の内村には金メダルへの執念も感じた。

 その内村を超える可能性を感じさせたのが、加藤だ。今大会は団体総合の金メダルに集中し、あえてDスコアを抑えてきた。目標を達成したことで今後は、技の難度を上げ、攻めていくと思う。この日の個人総合の悔しい経験は、さらなる高みを目指す加藤の進化と成長の礎になる。東京五輪では、日本をけん引する選手として、チームを引っ張っていってほしい。 (2012年ロンドン五輪男子日本代表監督)

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2016年8月11日のニュース