白鵬、幕内900勝!中国「荘子」名料理人の境地

[ 2016年7月18日 05:30 ]

松鳳山(左)を送り出しで破り1敗を守った白鵬

大相撲名古屋場所8日目

(7月17日 愛知県体育館)
 3場所連続38度目の優勝を狙う横綱・白鵬は平幕の松鳳山を冷静に送り出し、1敗を守った。5日目の宝富士戦での黒星の反省を大いに生かし、相手を巧みにさばく相撲で史上1位の幕内勝利数を節目の900に伸ばした。トップを走る1敗は白鵬、日馬富士、稀勢の里、高安の4人で、宝富士ら平幕の4人が2敗で続いている。

 その場で相手の隙を見つけ、さばく。それを平然とやるのが今の白鵬だ。闘志と瞬発力が自慢の松鳳山に対して、立ち合いでしっかり当たってから左手を前に差し出して様子見。じっくりお手並み拝見してから最後は相手が前に出てきたところに乗じ、「左が深く入ったから」と土俵上を時計回りに動いて送り出した。

 5日目の宝富士戦では攻め急いで不覚を取ったが、その後3日は負けない相撲を取り続けて、史上1位の幕内勝利数は節目の900に到達した。そのうち横綱での白星だけで706を記録していることが最強の証だろう。取組後の支度部屋では「こうなったら幕内1000勝でしょう」と宣言した。残り6勝に迫る史上3人目の通算1000勝を飛び越え、さらに大きなモチベーションの材料を脳内に追加した。

 相手をさばいて料理する6日目からの相撲は、5年前に白鵬自身が口にした理想の横綱像にぴったりだ。中国の「荘子」に登場する名料理人「包丁(ほうてい)」という人物。包丁は王の前で牛1頭を刀で難なくさばき「ただ技や力でやろうとは思っていません。自然の摂理に従って骨、筋、肉の間にある隙間を見いだしたのです。だから私の刀は19年使っていても砥石(といし)に当てたばかりのように輝いている」と言ったとされる。当時の白鵬は「まだ深く感じられない…」と模索していたが、現在のスタイルはまさにその境地だ。

 この日、NHK放送のゲスト解説を務めた元中日投手の山本昌氏は打ち出し後に白鵬を「イチローや武豊に共通するオーラがある」と評した。10年目に突入した横綱の立場で磨き上げた白鵬の刀は、勝負の後半戦でどんな切れ味を発揮するのだろうか。

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