相撲がより面白くなる 白鵬の立ち合いに注目、稀勢戦に見る作戦とは

[ 2016年6月8日 09:30 ]

横綱・白鵬

 大相撲の横綱は勝てなくなれば引退を強いられる。そして、いつの時代も必ず終わりはやって来る。だが、現在の「白鵬一強時代」は10年春場所に一人横綱なってから6年を超えてもなお、終焉(しゅうえん)を迎える気配は見えてこない。

 5月に両国国技館で行われた夏場所でも31歳の白鵬は全勝を飾り、自身の持つ史上最多優勝回数を「37」に更新。史上3人目の通算1000勝までは残り「13」となり、春場所2日目から続く連勝も「29」まで伸びた。次なる名古屋場所(7月10日初日、愛知県体育館)では横綱に昇進してから10年目に突入する。

 白鵬の強さの一つとして立ち合いのバリエーションの豊富さがある。最近は(1)「右を固めて左前まわし狙い」、(2)「左で張って右かち上げ」という2種類を多用。(1)は魁聖、碧山、逸ノ城ら大型力士に使うことが多く、(2)は琴勇輝、勢、宝富士ら力をつけた関脇以下に繰り出すとともに、稀勢の里と豪栄道の2大関に対しても作戦の一つとして出す傾向がある。加えて(3)「左で張って右差し」、(4)「右で張って左差し」、(5)「後の先」、(6)「もろ手」、(7)「猫だまし」、(8)「変化」など場面に応じてさまざまな立ち合いを試している。

 特に稀勢の里に対しては毎場所のように作戦を変更。昨年初場所以降、取り直しを含めると稀勢の里戦で試した立ち合いは(4)→(5)→(5)→(4)→(2)→(2)→(5)→(2)→(4)となる。13日目の全勝対決で迎えた先場所は(4)で狙い通りに左四つに組んで攻め続け、最後は下手投げで勝利。白鵬はあえて相手得意の型に組んだことを強調した上で「勝つなら勝ってみい、それで横綱になってみろという感じだった」と胸を張ったが、昨年初場所以降3度目となる(4)で、決して珍しい立ち合いではなかった。

 次なる名古屋場所ではどんな相撲となるのか。重くて強烈な左からの攻めを持つ稀勢の里に対し、白鵬が考えた立ち合いで先手を奪おうとしてくるのは間違いない。終わりの気配が見えない「白鵬一強時代」に安定感抜群の大関が風穴を開けることはできるのだろうか。白鵬の立ち合いに注目して見てみると一層面白くなる。(鈴木 悟)

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2016年6月8日のニュース