熊本出身の正代が大関初撃破 地震から1カ月節目の日に

[ 2016年5月15日 05:30 ]

正代(右)は照ノ富士を突き落としで破る

大相撲夏場所7日目

(5月14日 両国国技館)
 熊本県宇土市出身の幕内・正代が大関・照ノ富士を突き落としで破り、大関戦初勝利を飾った。14年春場所の入門以来、負け越し知らずのホープ。今場所は6連敗スタートだったが、諦めない心を土俵で示して被災地を勇気づける大きな1勝を挙げた。横綱・白鵬、大関・稀勢の里はともに7連勝。全勝の2人を1敗で平幕・栃煌山を含めた3人が追う展開となった。

 熊本地震から丸1カ月。地元力士の最高位として正代ができることは、諦めない姿勢を土俵上で見せることだけだった。照ノ富士に前みつを握られて寄られたが、必死に耐えて右から突き落として逆転。初日から7日連続で続いた横綱大関戦もこの日が最後で、これまでは全く見せ場がなかった。「心が折れそうになったというか折れていました」と明かすが「最後の最後に勝てたのはうれしかった」とラストチャンスを見事に生かした。

 自身初のNHK殊勲インタビューでは「少しでも熊本の皆さんに元気を届けられれば」と生中継の画面を通してメッセージを送り、支度部屋では「大関に勝ったことで見てる人も喜んでくれるかな」と安どの表情。帰り際には「地元のために勝ったと書いておいてください!」と熊本力士代表としての自覚でいっぱいだった。

 地震のあった4月14日午後9時26分、正代は春巡業で群馬県高崎市内に滞在中だった。熊本県宇土市内の平屋に住む家族とはすぐに無料通信アプリ、LINEで連絡がついたが「実家は窓ガラスが割れ、水も電気も止まった」と報告を受け、心配が尽きなかった。その上、3月29日に地元応援団から、故郷のシンボルである獅子舞が描かれた化粧まわしを直々に贈られたばかりで、その贈呈式の会場となった宇土市役所も半壊。現在、家族は実家暮らしだが、同市内では計8カ所で避難所生活を続ける人々がおり、市役所機能も体育館に移された。今場所後に地元に駆けつけるが「僕にできることは土俵で頑張ること」と強調。半壊前の市役所で受け取った真新しい化粧まわしを初日から締め、きょう中日からは母校・熊本農高から贈られたものを使う。

 消極的な発言が多く、ネガティブな性格がクローズアップされ続けた24歳。だが、自らの宿命を知る今は違う。「まだ立ち合いは押し込まれているので前に出る相撲を取っていく」。暗いトンネルから脱し、光は見えた。もちろん勝ち越しも諦めていない。

 ◆正代 直也(しょうだい・なおや)1991年(平3)11月5日、熊本県宇土市生まれの24歳。熊本・鶴城中―熊本農高―東農大。大学2年時に全国学生相撲選手権で優勝。得意は右四つ、寄り。14年春場所の前相撲で初土俵を踏み、序ノ口から12場所連続勝ち越し中。昨年秋場所新十両に昇進し、今年初場所新入幕で10勝を挙げて敢闘賞を獲得した。家族は両親、姉、弟。1メートル83、160キロ。血液型A。

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2016年5月15日のニュース