五輪エンブレム 単色のワケ「形だけで勝負 東京ですから」

[ 2016年5月12日 08:30 ]

 4月25日、2020年東京五輪の新たな大会公式エンブレムが「組市松紋(くみいちまつもん)」に決定した。最終候補4作品が発表された時点で、一つだけ藍色一色のデザインに「なんで?」と思った人も多いはず。デザインを手掛けたアーティストの野老(ところ)朝雄さん(47)に直接話を聞く機会があったため、単色にした理由を聞いてみた。

 他の最終候補は五輪カラーを基調とした作品だっただけに、ネット上では「地味すぎる」「カラフルへのアンチ」との批判もあがった。ネットの意見に関しては「見ないようにしてたんですけど、たまに見ちゃいましたね」と苦笑い。「でも、浴衣だって決してカラフルではないですけど、世界に誇れるデザインですよね。単色こそ日本らしさなんじゃないかと思ったんですよね」と説明した。

 デザインを作る際に、参考になったのが江戸小紋だった。江戸時代の大名の正装だった裃(かみしも)に使われた紋様で、遠目に見たら無地に見えるような細かい模様が使われているのが特徴。「白地に紺や、黒地に金など、目立たないような配色でも十分に魅力が伝わるように出来ている。私のデザインへのこだわりとして、形だけで勝負出来るものを作りたかった」と話した。

 野老さんの作品は、その多くが縦に並べても横に並べても柄がつながるのが特徴で、一部では「トコロ柄」とも呼ばれている。そのため、本人も「大きく一つでも、小さいのを何個も並べても使える」と話すように、展開のしやすさはとても高い。「そこも意識して単色にしている部分もあります」と野老さん。「“東京”五輪ですから、日本の心や伝統を受け継いだ職人にこのデザインを使った作品をたくさん作ってほしい。そのために、どの技術でも表現できるデザインにしたかった」と語った。

 スポニチ本紙では野老さんが提案した「板を持った人が並んで、上から見たらエンブレムになっている」という人文字案を紹介したが、開会式で、また大会中、組市松紋がどのような形で輝きを放つのか。どのような作品となって残っていくのか、今から非常に楽しみだ。

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2016年5月12日のニュース