【金野潤の目】“らしさ”消えた原沢 重圧を解放するには良い黒星

[ 2016年4月30日 11:10 ]

<全日本柔道選手権大会>準決勝で上川に敗れ、がっくり引き揚げる原沢

柔道全日本選手権

(4月29日 東京・日本武道館)
 原沢らしさがまったく見られない、残念な結果になった。初戦から体が動いておらず、珍しく指導狙いの柔道もあった。準決勝の上川戦は2度、崩されたことが判定で敗れた結果だが、その原因は明確。自身の技の出が遅かったからだ。

 本来の原沢の柔道は、組み勝った瞬間に一本を取りに行く積極姿勢が持ち味。この日の技が遅かったのは(1)体調面が万全ではなかった(2)五輪代表と大会連覇を懸けた戦いで「勝ちたい」ではなく「負けられない」に気持ちが変化した、の2点が考えられる。(1)に関して言えば、多くの強化委員も指摘するように、4月だけで2つの選考大会(選抜体重別、全日本)があることも影響しているかもしれない。高校時代からエリートではなかった原沢にとって(2)の経験も初めてで、戸惑いもあっただろう。

 ただし、連戦連勝で来た1年をリセットし、背負っていた重圧を解放するにはいい黒星だったととらえてほしい。今後は軸である内股だけでなく、大外刈りや体落としなど、技の幅も広げていく必要はあるが、力量的には十分世界の頂点に届く位置にいる。前述の通り、ジュニア時代から敗戦を糧に強くなってきた男だけに、期待したい。 (94、97年全日本選手権者、日大男子監督、文理学部准教授)

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2016年4月30日のニュース