原沢 準決勝で敗れる リオ切符獲得も「悔しくて情けない」

[ 2016年4月30日 05:30 ]

柔道全日本選手権で優勝し、カメラのフラッシュを浴びる王子谷(後方)とは対照的に肩を落として畳をあとにする原沢

柔道全日本選手権

(4月29日 東京・日本武道館)
 男子100キロ超級のリオ五輪最終選考会を兼ねて行われ、代表レースの1番手にいた原沢久喜(23=日本中央競馬会)は準決勝でロンドン五輪代表の上川大樹(26=京葉ガス)に旗判定の末、0―3で敗れた。昨年のこの大会から始まった国内外での連勝は7で止まり、連覇を逃した。しかしライバルの七戸龍(27=九州電力)も優勝した王子谷剛志(23=旭化成)に屈して準決勝で敗退。大会後の強化委員会では満場一致で、原沢が初めての五輪代表に決定した。

 柔道最後の五輪代表が決まる晴れ舞台に、晴れ渡る笑顔はどこにもなかった。一歩届かなかった七戸はぼう然。初優勝を逃した上川は涙。五輪レースから脱落していた王子谷も喜色満面とはいかない。そして誰より複雑なのは原沢だった。

 準決勝で敗れると、会場脇のパイプイスに腰を下ろして深く深くうつむいた。「本当に情けない。自分のいいところが全く出ず、全然駄目だった」。代表決定後も「悔しくて情けない」と繰り返した。1カ月前の全日本選抜体重別選手権を制した抜群の強さは影を潜めた。「緊張は感じていなかったのに技が出なかった。それがプレッシャーなんだなと」。動きは硬く、技でのポイントは一度も挙げられなかった。

 準決勝は直前の試合でライバルの七戸が敗退した。それでも本来の動きが戻らない。開始1分、上川の支え釣り込み足に腹ばいになって落ちた。ポイントこそつかなかったが「審判の印象は相手に傾く。何とか取り返したかった」。1カ月前に一本勝ちした相手に組み手で先手を取られ、思うように試合が運べない。追い込まれると内股を乱発。大内刈りなどで逆方向へ崩す余裕もなかった。3本の旗判定は当然のように上川に上がった。

 それでも十分な実績を積み上げ、現在の世界ランキングは2位。一つの負けが全てを否定するものではない。男子代表の井上康生監督は「わたしが見る中でも(心に)隙ができていた。がむしゃらさがないと今日みたいな試合になってしまう」と戒めた。男子最重量級は日本柔道の柱。五輪本番では、世界選手権7連覇のリネール(フランス)が立ちはだかる。日本の期待を背負う23歳は「覚悟を決めて死に物狂いで金メダルを獲りにいきたい」と絶対王者との初対戦を見据え、敗戦を心に刻みつけた。

 ◆原沢 久喜(はらさわ・ひさよし=男子100キロ超級)15年に全日本選手権、今年は全日本選抜体重別選手権を初制覇。昨年12月のグランドスラム(GS)東京、今年2月のGSパリなど国際大会は7連続優勝中。世界ランキング2位。得意は内股。山口・早鞆高、日大出。日本中央競馬会。1メートル91、123キロ。23歳。山口県出身。

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