山部 2年ぶり3度目V!大逆転で初の五輪切符

[ 2016年4月18日 05:30 ]

田知本(左)から一本勝ちで笑顔の山部

柔道全日本女子選手権

(4月17日 横浜文化体育館)
 女子78キロ超級のリオ五輪最終選考会を兼ねて行われ、山部佳苗(25=ミキハウス)が初めての五輪代表に決定した。決勝ではライバルの田知本愛(27=ALSOK)に一本勝ち。試合終盤に田知本が右膝を痛めるアクシデントもあったものの、五輪代表への執念を見せて2年ぶり3度目の優勝を飾った。今月2日の全日本選抜体重別選手権に続いて選考レース終盤で2大会連続優勝。国際大会などの実績では劣るとみられていたが、その後の強化委員会で全会一致で決定。大逆転での代表入りとなった。

 五輪代表決定まで残り時間は50秒。「待て」の声がかかり、2人の体が離れた瞬間、山部の目の前で田知本が突然へたり込んだ。すぐに立ち上がれず、ケガを負ったのは誰の目にも明らかだった。だが、これは五輪切符を懸けた一世一代の勝負。情けをかける余裕は山部にもなかった。

 「相手がどうなろうと一本勝ちしないといけない。一本を取るためだったら手段を選んでいられない」

 再び田知本がよろけた瞬間に猪突猛進。隅落としで技ありを奪うと、そのまま横四方固めに捉えた。試合時間は6分2秒、合わせ技での一本勝ちで、同じ決勝で敗れた1年前の借りを返した。

 高校時代はほぼ無名の存在。大学には進まず、柔道をやめて就職の道も考えていた遅咲きの代表だ。前回のロンドン五輪は全くの圏外で、25歳にして今回が初めての五輪代表争い。今までにない緊張感に襲われた時期もあった。

 「この大会で代表が決まってしまう。五輪、五輪という(気持ち)のが凄く強くて試合の畳に上がるのも、練習の畳ですら怖いと思った」。昨年12月のグランドスラム東京ではメダルを逃し、今年2月のグランドスラム・パリ大会は初戦敗退。だが、そこでようやく吹っ切れた。

 「いろんな話を聞いて、本を読んで、吸収して受け入れた」。ラグビー日本代表のメンタルコーチの本を読み、「今までは出したら負けだと思っていた」という自分の弱さを吐き出す大事さにも気づいた。薪谷翠コーチに「柔道やりたくないです」と正直に言うことで、重圧を乗り越えた。この日はこれまでと見違えるように相手に突進する山部の姿があった。

 強化委員会では田知本のケガよりも山部の一本勝ちを評価する声の方が多かったという。女子代表の南條充寿監督は「田知本のケガの回復が遅くなるから山部ということはない。内容を見て山部」ときっぱり言った。

 「今は夢なのか、夢じゃないのか分からない。これで自信を取り戻せた。五輪ではもっともっと攻める柔道をして金メダルを目指したい」。日本にとって女子78キロ超級はメダル獲得が不可欠な階級。厳しい代表争いをくぐり抜け、それにふさわしい選手へと成長した。

 ◆山部 佳苗(やまべ・かなえ=女子78キロ超級)15年世界選手権3位。全日本女子選手権を3度、全日本選抜体重別選手権を2度制した。世界ランキング12位。得意は払い腰。北海道・旭川大高、山梨学院大出。ミキハウス。1メートル72、108キロ。25歳。北海道出身。

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