ウィレット逆転初Ｖ！“孝行息子”出産早まり急きょ出場

前年優勝のスピース（左）からジャケットを着せてもらうウィレット（ＡＰ）

マスターズ最終日

（4月10日 米ジョージア州オーガスタ、オーガスタ・ナショナルＧＣ＝７４３５ヤード、パー７２）
　本来なら出場していなかったかもしれない大舞台で、２８歳のウィレットが逆転優勝を飾った。首位を走っていたスピースが突然崩れたのを尻目に着々とバーディーを奪い、３打差をひっくり返した。「勝てて本当にうれしい」と感慨に浸った。

　３月末に英国で長男ザカリアくんが誕生したが、出産予定日は大会最終日の今月１０日だった。当初は「出産に立ち会うから、早く生まれてこない限りマスターズは欠場する」と決めていた。だが、早く第１子を授かったために急きょ参戦を決意した。コース入りしたのは４日夜で、選手登録したのは出場者の中で最後の８９番目だった。「間に合ってよかった」は本音だった。

　首位スピースの背中を追って、前半で２つ伸ばした。１３番パー５で２オンに成功して２パット、１４番では１メートルにつけて連続バーディーを奪った。スピースの失速で首位に立つと、１６番パー３では２メートルのバーディーパットを沈め「あれは大きかった」と右手でガッツポーズをつくった。

　最終日に６７の堂々たる内容で、欧州勢としては９９年のホセマリア・オラサバル（スペイン）以来、１７年ぶりの制覇。くしくも、最終日は妻ニコルさんの誕生日だった。最愛の妻と息子は遠く離れた英国にいる。一家の大黒柱は「妻はいい時も悪い時もずっと支えてくれた。グリーンジャケットを持って帰るよ」とニッコリ。思わぬ流れで参加した“ゴルフの祭典”で、１人増えた家族へ最高の贈り物を手にした。

　◆ダニー・ウィレット　１９８７年１０月３日、英国シェフィールド出身の２８歳。アマチュア時代から国内大会で優勝するなど活躍し、０８年には世界アマチュアランキングで１位。同年にプロ転向し、主に欧州ツアーでプレー。１２年に同ツアーを初制覇し、今回マスターズでの勝利を含めて通算５勝。マスターズには昨年初出場し３８位。今年に入って世界ランキング２０位以内を維持していた。１メートル８３、７７キロ。