羽生「見たか!この野郎」怒とうの首位発進 SP110・56点

[ 2016年4月1日 05:30 ]

男子SPの演技を終え、雄叫びを上げる羽生

 【フィギュアスケート世界選手権第1日(2016年3月30日 米マサチューセッツ州ボストン)】

 羽生結弦(ゆづる、21=ANA)が怒りの首位発進だ。男子ショートプログラム(SP)で、自身の持つ世界最高得点110・95点に肉薄する110・56点をマークし、昨季王者でSP2位のハビエル・フェルナンデス(24=スペイン)に大会史上最大となる12・04点の大差をつけた。この日の昼の公式練習ではデニス・テン(22=カザフスタン)に進路妨害されて精神状態が乱れたが、本番では立て直してほぼ完璧な演技を披露。1日(日本時間2日)のフリーで、2季ぶりの世界一を狙う。

 大歓声が降り注ぐ中、「バラード第1番」を締めくくった羽生が叫ぶ。「よっしゃ~、見たか!」。冒頭の4回転サルコーを決めて勢いに乗ると、続く4回転―3回転の2連続トーループ、後半のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も申し分なし。ステップのレベル3以外は完璧に演じきった。15年12月のGPファイナルで自身がマークした世界最高得点に迫る110・56点での首位発進。少し落ち着きを取り戻すと、雄叫びに込められた真意を明かした。

 「よっしゃ~と思って。キタ~と思って。見たか!この野郎みたいな、そんな気持ちだった」

 本番の約10時間前、公式練習のサブリンクで、羽生は叫んだ。「それはねえだろ、おまえ!」。SP使用曲を流しての滑走中、テンが羽生の演技を妨げる場所でスピン。「たぶん故意。ビデオを見た時に、完全に僕の方をチェックして、普通だったら入らない方向に入っている。何か変だなと思っていた」。29日の練習でも同様のシーンがあり、昨年の世界選手権の公式練習では転倒した羽生に向かってテンが突進してきたこともある。

 激情に駆られ「精神状態はグチャグチャだった」と振り返る。練習後も「(トップを)獲ってやる!」と心は荒ぶったまま。だが、周囲と、自己との対話を重ね一つの答えにたどり着く。「結果どうのこうのじゃなくて、感覚どうのこうのじゃなくて、どういう演技を見せたいとかそんなの関係なく、自分がどうやりたいか」。やりたいことを2分50秒に込めた。だから演技後、みんなに、そして自分に言いたかった。「見たか!」と。

 スケートを始めて17年がたつ。ソチ五輪で戴冠し、世界記録を更新。一方で、昨季の中国杯では激突事故もあった。「いろんな経験から、いろんな方法論を導き出して、それが通用したのが良かった」。21歳とは思えない豊富なキャリアこそ羽生の最大の武器だ。

 2位フェルナンデスと12・04点差でフリーに臨む。2季ぶりの金メダルを視界に捉え、合計330・43点の世界最高得点の更新も可能性は十分。「ステップや4回転トーループで改善の余地がある。来季と言わずフリーに向け、しっかりと改善していきたい」。世界一の称号を取り戻した時、羽生がまた強くなる。

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