白鵬 変化Vに涙の謝罪も…支度部屋でニヤリ「稀勢関も変化」

[ 2016年3月28日 05:30 ]

4場所ぶり賜杯に、優勝インタビューで目頭を押さえる白鵬

大相撲春場所千秋楽

(3月27日 エディオンアリーナ大阪)
 結びの大一番で、横綱・白鵬(30=宮城野部屋)が左に変化して、横綱・日馬富士(31=伊勢ケ浜部屋)をあっさりと突き落とし4場所ぶり36度目の優勝を決めた。優勝インタビューの際にはあっけない幕切れに怒った観客から強烈なヤジを浴びると、まさかの涙。初日黒星から14連勝しての復活優勝は後味の悪さを残してしまった。
【千秋楽取組結果 星取表】

 目を疑う結末だった。勝てば優勝が決まる結びの一番。白鵬は立ち合いで右手を伸ばすと、左へ跳んだ。意表を突かれた日馬富士は土俵外へ一直線。白鵬は左手で相手の背中を押し、わずか1秒1で勝負がついた。

 「何やそりゃ!」「勝てば何でもええんか!」「恥を知れ!」。横綱の変化に怒った大阪のファンから強烈なヤジが飛んだ。座布団も数枚舞った。優勝インタビューでやまないヤジを耳にした白鵬は何度も言葉を詰まらせて「千秋楽でああいう変化で決まるとは思わなかった。本当に申し訳ないと思います」と頭を下げた。「すみません」を繰り返すうちに涙があふれてきた。復活を印象づけるスピーチのはずが、異例の謝罪とまさかの涙。後味の悪さが館内に充満した。

 年1回のモンゴル相撲を6度制した父・ムンフバトさん(74)に並ぶため、それに相当する36回(年6場所×6年)の優勝を一つの目標にしてきた。秋場所は左膝痛で初日から2連敗し、横綱になって初めて途中休場し、復帰後の2場所は終盤で失速して、3場所優勝から遠ざかった。「いろいろこみ上げるものがあった。ケガもあったり、オヤジに並んだり、重なりましたね」。複雑な思いが頭を巡り最後は涙が止まらなかった。

 それでも表彰式を終えて支度部屋に引き揚げてきた頃には笑顔に変わっていた。「あれで決めるつもりはなかった」と悪気はなかったことを強調。1差で次点に終わった稀勢の里が琴奨菊相手に変化して勝ったことを引き合いに出し「稀勢関も変化があったから、これで文句は言われないでしょう」とニヤリと笑った。今場所は初日に宝富士に不覚を取った。8日目にはダメ押しした嘉風の下敷きになった審判部の井筒副部長(元関脇・逆鉾)が左脚を骨折する事故を起こし、審判部に厳重注意された。だが、いつまでも過ちを引きずるような男ではない。

 昨年の初場所、大鵬を抜く史上最多33度目の優勝を果たした後、「どこに向かっていけばいいのか」と悩んだ姿はもうない。現在通算勝利数は972勝(3位)。1位魁皇(1047勝)超えを視野に「目指せ1000勝です」と言った。第一人者だからこそ、周囲の視線は自然と厳しくなる。涙は孤独な胸の内の表れか。いずれにせよ、白鵬に強さが戻ったことは間違いない。

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