稀勢の里、反骨逆転10連勝!絶体絶命の土俵際 鶴竜吹っ飛ばした

[ 2016年3月23日 05:30 ]

小手投げで鶴竜(左)を破り、全勝を守った稀勢の里

大相撲春場所10日目

(3月22日 エディオンアリーナ大阪)
 初優勝を狙う大関・稀勢の里(29=田子ノ浦部屋)は横綱・鶴竜(30=井筒部屋)を土俵際での執念の小手投げで破り、10連勝で単独首位を維持した。先場所後から下半身を強化した成果が絶体絶命の場面で表れた。琴奨菊(32=佐渡ケ嶽部屋)は豪栄道(29=境川部屋)との大関対決で3敗目を喫し、今場所後の横綱昇進は絶望的となった。優勝争いは全勝の稀勢の里を1敗で白鵬(31=宮城野部屋)と豪栄道が追い、2敗は平幕の2人となった。

 勝利への執念が稀勢の里に火事場のバカ力を発揮させた。鶴竜の強烈な喉輪押しを必死に耐えたものの、一瞬の隙を突かれて2本差されて厳しい体勢に。土俵際まで寄られ、まさに絶体絶命の状況となり館内は悲鳴に包まれた。それでも、悲願の初優勝を狙う大関だけは諦めていなかった。抱えた左から振って回り込むと最後は右からの強烈な小手投げ。横綱を俵の外まで吹っ飛ばし、自身も土俵上に前のめりに倒れ込む渾身(こんしん)の逆転劇だった。

 額に傷をつくった鶴竜の返り血を浴びた大関の頬、そして何よりも館内から響いた地鳴りのような歓声と万雷の拍手が大激戦を物語っていた。見ている誰もが胸を打つ勝利で唯一の全勝を守った29歳は支度部屋で「体が動いてくれた。思い切ってやりました。まあ集中して」と手応えを示しつつ、執念か?と問われて「うん」とつぶやいた。

 入門時から稀勢の里の相撲を片時も見逃していない父・萩原貞彦さん(70)は今場所の大関について「もともと股関節が弱いので下半身をだいぶ強化したようだ。立ち合いも以前より足幅を広めて腰を割って仕切っているように見える。その辺の話は少しだけしましたね」と明かす。琴奨菊が初優勝を飾り、自身は9勝6敗に終わった先場所後。自らの頭で改善策を練って実行して成長を遂げた息子に対し、父は「きれいな奥さんもいないしトレーナーもいない。全部自分でやるしかない。大したもんだと思う」と褒めた。その成果がこの日の土俵際での粘りに見事につながった。

 稀勢の里にとって最も優勝が近づいたのは3年前の夏場所だろう。初日から13連勝を飾ったものの、14日目の白鵬との全勝対決に敗れ、賜杯を持っていかれた。今場所はそれ以来となる10戦全勝での終盤戦突入となる。全てが決まる残り5日間の始まりは11日目の白鵬戦。「これからが勝負。思い切ってやるだけ」。孤独な闘いのゴールはまだまだ先だということは、本人が誰よりも分かっている。

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