琴勇輝 初金星に号泣 兄弟子・琴奨菊の綱獲りアシストだ

[ 2016年3月16日 05:30 ]

日馬富士を破る金星を挙げ、土俵際で涙ぐむた琴勇輝

大相撲春場所3日目

(3月15日 エディオンアリーナ大阪)
 東前頭筆頭・琴勇輝が横綱・日馬富士を押し出しで下し、初金星を挙げた。13年九州場所で負った「左膝膝蓋(しつがい)腱断裂、前十字じん帯損傷」の重傷から復活し、自己最高位で今場所を迎えた男が、綱獲りに挑む兄弟子の大関・琴奨菊に最高の援護射撃を行った。現在の3横綱が休場せず、3日目までに全員に土がつくのは初めて。全勝は琴奨菊ら4大関と逸ノ城ら平幕4人の計8人となった。

 勝ち名乗りを受ける時にはもう泣いていた。勝ち残りで土俵下で待っている時も、テレビのインタビュールームでも涙は止まらなかった。「つらくて悔しくて泣いたのは何回もある。うれしくて泣くのは数えるほど。勝つことができるなんて信じられなかった」。対横綱3戦目で初の金星を手にした琴勇輝は人目をはばかることなく男泣きした。

 自身のスタイルを貫いた。前日は気合を入れるためのルーティンである取組前の雄叫びを注意された因縁の相手、白鵬に手も足も出ず完敗。白鵬には「出直してこい」と冷ややかに突き放された。それでも「雲の上の人。引きずる相手じゃない」。この日も「ホゥ」と自らを鼓舞。日馬富士に思い切りぶち当たった。右喉輪でのけぞらせ、間髪入れずに左を突いた。横綱を土俵外へ突き飛ばし、注目されるパフォーマンスだけでなく、取組でもファンを沸かせた。

 左膝には今も痛々しい10センチほどの手術痕が残る。13年九州場所での大ケガで「やる気が尽きて、気持ちが上がってこなかった」。2場所休場し、体重は20キロ減。母・さゆりさんに「やめたい」と漏らしたこともあった。それでも「自分は相撲を取るために生まれてきた」と懸命にリハビリし、十両から再出発。地道に番付を上げて、今場所は自己最高位だった。

 これで3横綱に土がついた。金星は琴奨菊の援護射撃となり「稽古をつけてもらって、強くしてもらった」兄弟子に最高の恩返しとなった。もちろんこの先も「部屋は一つのチーム。少しでも大関の力になりたい」とさらなる援護砲を誓う。

 そして、もう一つ気にかけているのが選抜高校野球に出場する母校・小豆島高(香川)。既に「小豆島オリーブ牛」1頭分を差し入れしている。「一つ背中を押してやれたかな」。そう話す時には笑顔に変わっていた。

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