沙羅W杯3度目総合V 萩原健司に並んだ「クイーン・オブ・スキー」

[ 2016年2月20日 05:30 ]

2季ぶり3度目の総合優勝を決め笑顔で手を振る高梨(AP)

ノルディックスキー W杯ジャンプ女子個人第15戦

(2月19日 フィンランド・ラハティ=HS100メートル、K点90メートル)
 高梨沙羅(19=クラレ)が2季ぶり3度目のW杯個人総合優勝を決めた。1回目に96・5メートルで首位に立ち、2回目は最長不倒の99・5メートルをマーク。合計251・3点で今季12勝目、通算42勝目を挙げた。昨季の個人総合女王でW杯得点2位のダニエラ・イラシュコ(32=オーストリア)に431点差をつけ、4試合を残してタイトルが確定。スキーW杯での3度目の総合優勝は“キング・オブ・スキー”と呼ばれた複合の荻原健司に並ぶ日本人最多記録となった。

 総合優勝の感想を求められた高梨は「Amazing!(素晴らしい)」と満面の笑みで答えた。しかし、その言葉はむしろ周囲が高梨に贈りたいものだったはずだ。

 世界選手権も五輪もない今季はW杯総合優勝に心血を注いできた。「今季の目標だったので本当にうれしい」。この日も試技と本番の合計4度の飛躍で、飛ぶたびに距離を伸ばした。最後はヒルサイズに0・5メートルに迫る大ジャンプ。圧倒的なパフォーマンスでの戴冠だった。

 年間6勝で総合2位だった昨季は「準備不足だった」という。スキーとブーツをつなぐ金具の破損が続き、途中で古い型に戻すなど飛躍以前の調整に時間を費やした。助走路の滑りは乱れ、不安定な飛躍に心も揺らいだ。「課題が多すぎて、今季の春は何から手をつけていいのか頭の中がごちゃごちゃになっていた」

 コーチや父・寛也さんと問題点を整理し、まず取り組んだのは助走姿勢の改善。いい時と悪い時の映像を見比べて動きを細かく見直し、ゲートからスタートする際にぐいっと腰を伸ばすルーティンも取り入れた。練習日は助走路の脇に立ち、他選手の飛躍を見ながらジャンプ台攻略のイメージを膨らませるようにした。14日の前戦は「最後まで台の特徴をつかみきれなかった」と今季初めて表彰台を逃したが、今大会も試技でじっくりと他選手の飛躍を観察し、毎大会異なるジャンプ台を克服していった。

 課題だった着地でも「こつをつかんだ」とテレマーク姿勢が入る確率が上がって飛型点が向上した。その成果が10連勝を含む12勝、計29回の飛躍のうち25回でトップの得点。3度の総合優勝は複合で圧倒的な強さを見せた荻原健司に並ぶ日本人最多だが、当時の荻原以上に高梨は他を突き放している。それでも「まだまだやらないといけないことは山積み」と語り、「見ている人を驚かせられるようなジャンプをしたい」という女王。目指す目標の高さは、もはや十分に驚きに値する。

 ▽荻原健司の3度の総合優勝 90年代初めの複合のジャンプはまだ両足をそろえるクラシカルスタイルばかり。荻原はいち早くV字ジャンプを習得し、大きなアドバンテージを得た。ジャンプで大きく引き離して距離で逃げ切るスタイルで、92~93年シーズンはW杯初勝利を含む6勝、93~94年は5勝、94~95年も6勝。北欧勢が圧倒的な強さを誇っていた複合で、史上初の3連覇を達成した。

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