相撲人気継続へ リピーター増やすための「土俵の充実」忘れないで

[ 2016年2月12日 09:03 ]

初優勝の喜びのあまり自分でもバンザイする琴奨菊

 1月24日に千秋楽を迎えた大相撲初場所は大関・琴奨菊の初優勝に大いに沸いた。10年ぶりの日本出身力士の優勝とあってスポニチの紙面も琴奨菊一色。前日までSMAP解散危機騒動の話題が連日一面を飾ったが、千秋楽翌日は琴奨菊が1~3面と社会面をかっさらった。観客動員に関しても東京場所では4場所続けて15日間の満員御礼(おおむね8割以上)を記録し、千秋楽のNHK平均視聴率も関東地区で24・0%(関西22・6%)をマーク。24%を超える平均視聴率は09年夏場所以来7年ぶりとなった。

 女性ファンなど新規開拓も進み大相撲人気はしばらく安泰のように見えるが、その一方で少しだけ心配な要素もある。チケットの完売を意味する「札止め」の回数だ。昨年9月の秋場所では東京場所で19年ぶりに15日間を記録したものの、初場所ではそれが11日間にとどまった。協会員の努力のたまものにより、不祥事にまみれた数年前と比べれば想像もつかない観客動員数を記録していることは紛れもない事実。ただ、わずかながらも客入りが減少したことに対し「もう、減ってしまったのか」と心の中でつぶやいてしまった。

 では、人気を持続するために重要なことはなにか。個人的には、リピーターの数を増やすことに尽きると思う。初めて館内に足を運んだ大抵の人々が「相撲独特の雰囲気を味えて良かった」とは口にするが、それだけでは1度きりになる可能性がある。いかに「あの熱戦、あの取組をもう一度見たい」と感じてもらえるかどうかに懸かっているのではないだろうか。

 千秋楽から2日後の1月26日に本紙編集局に対し、相撲ファンから一通のはがきが届いた。そこには「先場所もだが、白鵬は後半になると手を抜いている。不自然に思っているのは私だけではない」と書かれていた。大相撲人気に沸く今だからこそ、土俵を見つめるファンの目も厳しくなっていることを現役力士や親方衆は肝に銘じないといけない。たとえ満身創痍(そうい)であったとしても、力士は全ての力を土俵上で出し切る覚悟を持たなければ目が肥えてきたファンは満足してはくれないということだ。

 手に汗握るような大熱戦を、脳裏に焼き付いて生涯忘れないような大一番を、記録よりも記憶に残る大相撲を――。人気を一過性のものにしないためにも、亡き北の湖前理事長(元横綱)も常々口にした「土俵の充実」がやはり最重要視されると思う。(鈴木 悟)

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2016年2月12日のニュース