理解に苦しむ福士加代子の名古屋参戦 ゴールは五輪?メダル?

[ 2016年2月8日 12:30 ]

大阪国際女子マラソンで優勝した福士加代子

 誤解が生じると嫌なので、先に書いておきます。ワタシ、別に日本陸連の回し者じゃありません。

 1月31日の福士加代子(ワコール)が大阪国際女子マラソンで2時間22分17秒で優勝しました。日本陸連が定める派遣設定記録(2時間22分30秒)も突破し、リオデジャネイロ五輪の代表は決定的です。なのに、3月13日の名古屋ウィメンズマラソンにも出場するとか。指導する永山監督によると、決断の理由は「日本陸連から“確定”と言ってもらえなかった」から…。

 なんだそりゃ、とワタシは思いました。

 リオのマラソン選考基準は次の通りです。昨夏の世界選手権で日本人最上位入賞は内定(大塚製薬の伊藤舞が7位で決まり)。国内選考会は15年11月のさいたま国際、大阪国際、名古屋ウィメンズの3レースで、日本人3位以内の選手が選考対象になります。派遣設定を突破した選手は最大1人優先的に選ばれ、他は総合的な判断で選出されます。

 世界選手権で基準を満たせば即時、内定。国内選考会組は全レースを終えた後に強化委員会、理事会などのしかるべき手順を踏んでから決定、と明記されています。つまり、大阪国際で福士が仮に世界記録を出していても、陸連としては「内定」や「確定」は言えないわけです。むしろ、「福士さん素晴らしい。これはもう、内定にしちゃいますワ。我々は現場のプロですから!」なんて言った方が、大問題になることは必至でしょう。

 リオの選考は13年6月に方針が示され、15年7月に正式に発表されました。福士陣営が声を上げるタイミングは走った後ではなく、それまでに何度かあったはずです。「内定」が欲しいなら、昨年の世界選手権で狙えば良かったのです。同選手権の最上位入賞選手が内定するのは、13年に示されていましたからね。代表決定まで待つ時間が苦しいのなら、最初から名古屋ウィメンズ1本で勝負をかければ良かっただけです。

 確かに陸連の選考基準には曖昧なところもあるし、過去に「なんだそりゃ」と思う選考もありました。昨年の世界選手権の代表争いで、横浜国際を制した田中智美(第一生命)が落選し、大阪国際2位でタイムは田中よりも18秒速かった重友梨佐(天満屋)が選ばれた時は、厳しい視点で書きました。タイムがそれほど変わらないなら、勝った事実を重く見るべきだと思いましたから。

 同じ考え方から、名古屋ウィメンズでAさんが2時間21分で優勝、Bさんが2時間22分で2位に入って、ともに派遣設定記録を突破しても、Bさんよりも福士を選ぶべきだと考えます。これで福士が落選した時は、ワタシは選考に異を唱える原稿を書きますよ。世論だって、沸騰しますよ。ペースメーカーのハイペースに乗り、最終的に独走で優勝した福士の大阪国際は価値が高いと思います。

 名古屋ウィメンズで複数の派遣設定突破者が出ても、福士が日本人2位以内なら文句なしだろ!というのが陣営の考えでしょう。ということは、2時間30分レベルの調整は許されません。大阪国際に近い状態に仕上げる必要があり、当然故障のリスクも高まります。故障を理由に名古屋ウィメンズを欠場なんてしたら、むしろ代表に選びにくくなる可能性だってありますよ。

 あと、レース当日が強い向かい風などの悪コンディションで「誰も派遣設定には届かない」と判断したら、そこでレースを辞めるんですかね?これは結構、大会側に失礼な気がしますが…。

 福士のゴールはどこなのでしょう。リオに出ること?それとも、リオでメダルを獲ること?現時点でほぼ確実な前者を100%にするために、後者のパーセンテージが小さくなるなら、残念なことです。福士が落選の可能性を気に病んで「名古屋に出たい!」と言っても、故障リスクなどを考慮して止めるのが、周囲の役目じゃないかと思います。無茶を承知で参戦を促すのは、ちと違うのではないかと。

 走りまくる公務員・川内優輝(埼玉県庁)だって、こんなことはしません。12年ロンドン五輪の選考で、川内は日本人トップに入った福岡国際の後、東京にも出ましたが、これは福岡国際のタイムが悪く代表入りが福士よりもはるかに危うかったから。リオ選考でも福岡国際を走り、びわ湖毎日にも出ますが、選考再挑戦ではなく、惨敗した福岡国際のリベンジのためです。

 ここまで書いておきながらなんですが、ワタシは今でも福士は名古屋ウィメンズに出ないと思っています。だって、メリットよりもデメリットの方が、はるかに多いじゃないですか。(杉本 亮輔)

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