コート外も熱い戦い!全豪のストリンガールーム潜入、現れる錦織ら選手の個性

[ 2016年2月2日 09:00 ]

全豪オープンのストリンガールーム

 世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)の戴冠で幕を閉じた今年の全豪オープン。会場の一角には、大きなガラス張りのストリンガールームがあった。中にはラケットにストリングを張るための機械がずらり。ファンも足を止め、ガラス越しにその仕事ぶりを眺められる人気スポットだ。

 全豪の公式ストリンガーは今年からウイルソンに代わってヨネックスが務めるようになった。世界13カ国からえり抜きの約20人のストリンガーが集められ、期間中はガット張りにいそしむ。1日最高は本戦初日の544本。ラケット1本にかける時間は15~20分の早業だが、1人平均35本はこなしたというから気の遠くなるような作業だ。

 ストリンガー全員が全期間滞在するわけではなく、途中で帰国する人もいる。ヨネックスのテニス国際選手担当の下条紀臣さんは「勝ち残るであろう選手は、できるだけ最後まで同じ人間ができるようにしている」と説明してくれた。ストリンガーの滞在日を考えながら、1人に負担がかかりすぎないようにシード選手を配分する。例えば錦織圭を担当していた玉川裕康さんは、女子ではセリーナ・ウィリアムズ(米国)のラケットも張っていた。

 一般の選手は1本32豪ドル(約2740円)、ジュニアは20豪ドル(約1710円)。ただし一般だと1日5本、ジュニアは2本が無料になる。これらの料金は大会側との契約で定められているものだという。受付時にIDについたバーコードで管理され、費用は賞金から自動的に天引きされる仕組みになっているというから合理的だ。

 ストリングへのこだわりには選手の個性も現れる。地元オーストラリアの暴れん坊、ニック・キリオスはその振る舞いとは裏腹に意外と細かい。黒い文字で商品番号が印字されたものは断固拒否。それが混じっていると「これはオレのラケットじゃない」と突っ返してくる。

 錦織もこだわりの強い方で、必ず試合中に数本を張り替えに出してくる。玉川さんは他のストリンガーと試合を見ながら、「ロングのミスが増えたからテンション上げてくるなとか、ネットが増えたから下げてくるぞ」なんて話しているという。「これがだいたい当たるんです」と笑いながら教えてくれた。

 選手にとってそうであるように、ストリンガーにとっても4大大会は大舞台。玉川さんはこう言う。「海外のトップの人と一緒に仕事できるのは大きい。期間中に合計5000本も張り替えるなんてグランドスラムぐらいしかない。ここで認められて継続できるようにしたい」。ストリンガーの熱い戦いもひとまず幕を閉じたというわけだ。(雨宮 圭吾)

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2016年2月2日のニュース