琴奨菊 試される心の強さ 立ちはだかる「3横綱より嫌なメンツ」

[ 2016年1月22日 13:07 ]

V見えた?日馬富士戦でおなじみのルーティンを見せる琴奨菊

 大相撲初場所(両国国技館)は12日目(21日)を終えて大関・琴奨菊(31=佐渡ケ嶽部屋)が全勝で単独トップに立っている。1差で横綱・白鵬、2差で横綱・日馬富士と平幕・豊ノ島が追う。琴奨菊がこのまま逃げ切れば、日本出身力士としては06年初場所の栃東以来ちょうど10年ぶりとなるメモリアルな初優勝とあって、注目度が高まっている。

 琴奨菊は10日目から鶴竜、白鵬、日馬富士の3横綱をあっさり連破。賜杯獲得に向けてヤマ場を乗り切ったようにも見えるが、ここから先が本当の勝負だ。

 13日目は豊ノ島と対戦する。14日目は関脇・栃煌山、千秋楽は大関・豪栄道との対戦が濃厚だ。審判部の藤島副部長(元大関・武双山)は「横綱より下の相手の方がきついでしょうね。落とせないという気持ちが出てくる」と指摘する。3力士との過去の対戦成績は、対豊ノ島26勝12敗、対栃煌山13勝17敗、対豪栄道16勝20敗。2人に負け越している上に、大きく勝ち越す豊ノ島も今回は難敵だ。

 豊ノ島は2敗で優勝争いに絡んでおり「こっちも狙えるところにいる。おもしろくなってきた」と虎視眈々とチャンスをうかがっている。同学年で小6から互いを知り、高知県内の中学、高校でしのぎを削ったライバル。豊ノ島には「(高校卒業後)入門した時は“関取になれればいいね”なんて言っていたけど、優勝争いするなんて思ってもみなかった。終わり方によってはドラマになる」と特別な思いがある。過去には琴奨菊の大関獲りの懸かった11年名古屋場所で初日で対戦して、出鼻をくじいた。結局、琴奨菊はこの場所での大関昇進を逃した。藤島副部長は「3横綱より嫌なメンツですよ。嫌らしい相撲を取りますからね」と警告する。

 八角理事長(元横綱・北勝海)も「プレッシャーがかかるのはこれからだよね」と終盤戦の難しさを指摘する。大関・稀勢の里は12年夏場所で11日目に2差をつけて単独首位だったが、終盤崩れて優勝決定戦にすら残れなかった。「初めての時はガチガチになる。優勝を意識しないようにしても、いろんな情報が入ってくる。私もいろんなことを考えて眠れなかった」と自身の経験も振り返る。

 今場所の琴奨菊は馬力を生かして足を止めずに前に出ることをできている。八角理事長は「気持ちで守りに入らないこと。守りに入ると動けなくなる」と心得を説く。これまで経験したことのないプレッシャーの中、これまで通り迷わず前に出ることができるか。残り3日、琴奨菊の心の強さが試される。(柳田 博)

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2016年1月22日のニュース