琴奨菊 10年ぶり日本出身力士V夢じゃない 白鵬倒し無傷11連勝

[ 2016年1月21日 05:30 ]

横綱・白鵬(左)を押し出す琴奨菊

大相撲初場所11日目

(1月20日 東京・両国国技館)
 大関・琴奨菊が横綱・白鵬との全勝対決を制した。左差し右を抱えてから得意のがぶり寄りで、棒立ちの最強力士を圧倒。優勝争いで単独トップに立つのは自身12年夏場所6日目以来、日本出身力士では同場所12日目の稀勢の里以来だ。06年初場所の栃東以来10年ぶりとなる日本出身力士の優勝へ、21日は1敗をキープする日馬富士との一番に臨む。

 どよめきが地鳴りのような大歓声に変わり、座布団が乱れ飛んだ。花道を引き揚げる琴奨菊の表情は硬い。自己ベスト更新の無傷11連勝で、優勝争い単独トップ。東支度部屋に戻っても「優勝」の2文字がちらついてしまうのか、いつものような笑顔になれない。荒く息をつきながら「自分を信じていた。(土俵で相手と)相撲を取るのは20秒から30秒。それ以外の時間は自分との闘い。そこで負けなかった」と独特の言い回しで“集中力”を勝因に挙げた。

 立ち合いの差し手争いで勝負を決めた。左を固めて白鵬が右をねじ込もうとしたところをブロック、がら空きになった相手の右脇に左を差し、右で抱える得意の形に。あとはひたすら圧力をかけるだけ。一度は体を入れ替えられたものの、上体を揺すりながら前へ、前へ。最後は右で胸を突いて押し出した。

 朝稽古で、その日の取組を予行演習するのが今場所の日課だった。相手役に仕切る際の癖まで細かく指示して本番をイメージ。だが、稽古を休んだ10日目に続き、白鵬に挑むこの日は稽古場に下りてもシミュレートしなかった。「もちろんイメージはできてます」。過去4勝46敗。大関獲りの過程で11年名古屋場所、秋場所と連勝したこともあるが、それ以前に19連敗の屈辱も味わった。脳裏に刻まれた苦い記憶もたどり勝機を探った。

 ドン、ドン、ドーン。出身地の福岡県柳川市で恒例の花火が打ち上げられた。勝てば1発。大関相手なら2発。この日の3発は地元大関の横綱撃破を知らせる“祝砲”だ。初優勝への期待がいよいよ高まり、後援会も準備に動き始めた。13日目からパブリックビューイング、優勝決定の際は花火増発などのプランが出ている。牟田口清事務局長は「これから話し合います」と後援会メンバーの柳川市、みやま市など近隣首長と連携しムードを盛り上げる構え。

 故郷からの温かい応援を背に、12日目は横綱・日馬富士と対戦する。「しっかり対策、準備をしたい。結果は全て自分に返ってくる」。優勝35回の現役最強力士を倒した余韻に浸る余裕はない。目前の一番に集中する先に賜杯が待っている。

 ▼八角理事長(元横綱・北勝海) 予想外だ。左を差し勝ち、止まらなかったのが勝因。優勝争いはまだこれから。これで決定戦の権利を得た感じだろう。まだ日馬富士との対戦もあるし、ここからが厳しい。気持ちで守りに入らないことだ。白鵬はここからというところだったが、いつもとは違った。

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