和製力士Vから10年経過の危機… 初場所“冬の時代”終えんなるか

[ 2015年12月26日 09:18 ]

日本出身力士の前に立ちふさがる横綱・白鵬

 大相撲は次なる初場所(来年1月10日初日、両国国技館)で“ある節目”を迎えるかもしれない。もしも、今回も日本出身力士が賜杯を抱かなければ、06年初場所に大関・栃東が最後の優勝を飾ってから丸10年が経過するのだ。この間、モンゴル出身が56回(白鵬が35回、朝青龍10回、日馬富士7回、鶴竜2回、旭天鵬1回、照ノ富士1回)、ブルガリア出身の琴欧洲とエストニア出身の把瑠都が1回ずつ優勝。むろん、国技館の館内に掲げられている32枚の優勝額も全て外国出身力士だ。

 この10年を振り返ってみると、日本出身力士に全くチャンスがなかったわけではない。06年夏場所では関脇・雅山が14勝1敗で優勝決定戦に進出するも、新大関の白鵬に黒星。10年九州場所にも平幕の豊ノ島が14勝1敗で決定戦に挑んだが、こちらも横綱・白鵬の壁にはね返された。そして、最も和製Vが近づいた瞬間が12年夏場所。栃煌山が12勝3敗で旭天鵬との史上初の平幕同士による決定戦に臨んだが、はたき込みで敗北した。ほかにも、稀勢の里は準優勝を9度も経験。日本出身力士は何度も何度も“ここ一番”の相撲に挑んでは敗れ、そのたびにことごとく賜杯を逃してきた。

 東京場所は現在も15日間満員御礼が続いており、決して日本出身力士の低迷ぶりが不入りやファン離れにつながっているわけではない。人生を懸けて来日した何人もの外国出身力士が上位で活躍しているからこそ現在の大相撲界は成り立っているし、もちろん日本出身力士も命懸けで土俵に上がっている。しかしながら、国技と呼ばれる大相撲で和製力士が10年間も賜杯を抱けないという事実は寂しい。力士を育てる親方衆にとっても、今回の初場所は本格的に危機感を抱く契機にはなると思う。

 横綱審議委員会の守屋秀繁委員長(千葉大名誉教授)は「日本人力士が優勝して横綱になってくれることをファンは期待している。そうなればもっと人気が出る」と期待を口にした。確かに、日本出身力士の活躍は大相撲界をさらに活気づける要因の1つにはなる。ましてや、10年ぶりの和製Vともなれば世間の話題をかっさらうことは間違いない。ある親方は「外国人力士はただ勝てばいいと思っている」と相撲内容を批判するが、時代を作っているのは紛れもなく外国出身力士。和製力士にとっての冬の時代は10年未満となるか、10年以上となるか――。16年初場所の1つの見どころではある。(鈴木 悟)

続きを表示

2015年12月26日のニュース