貴親方哀悼文「昭和の大横綱、平成の大理事長 その遺志を受け継ぐ」

[ 2015年11月27日 09:00 ]

<故北の湖理事長葬儀>故北の湖理事長の棺を乗せた霊きゅう車を見送る(左から)玉ノ井親方、貴乃花親方、八角理事長代行

 直腸がんによる多臓器不全のため、20日に62歳で急死した日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱)の密葬が26日、北の湖部屋で営まれた。葬儀に出席した“協会No・3”で総合企画部長などを務める貴乃花理事(元横綱、43)はスポニチ本紙に哀悼の意を寄稿。深い尊敬の念を抱く大横綱の死去を悼むとともに、今後も北の湖理事長の遺志を引き継ぎ、相撲界発展のために自らの職務を全うすることを誓った。

 【貴乃花親方哀悼文】

 寛大なる心を忘れない、憎たらしいほどに強い横綱。それは本来、私どもには優しすぎるほどに美しいという意味です。その威厳と品格に優れた理事長の存在にどれだけ救われたことかを考えますと計り知れない功績です。

 相撲協会の信頼を第一に考えた理事長は職責につくものたちへの慈悲も忘れることはありませんでした。入門して以来、我々の業界では“背中に学び、言葉ではない実行力を身につけるべく世界観を抱くように”と相応に教えられてきました。理事長はそれを体現させてくださった唯一無二のお方でした。すべての行動に基づいて感謝や慈愛を抱くべきと真摯(しんし)な態度で取り組まれておられ、強くて当たり前の横綱論、それを教えてくださったのも理事長です。

 横綱とは引退しても生涯貫くものであり、精神視野が重要視され、横綱の道は軽々には語れない。(理事長が遂行した)力士としての根幹となるその集約の入魂は後世に語り継がれるべきものです。それが親方業であり、この世は全て修行の行という在り方と文化の発展を担うものとしての苦悩を感慨深く表現されていたのも(理事長に)垣間見られました。辛抱強く耐え忍ぶ。これを実行に移したのが理事長です。平成の大理事長と言われるべきお方です。

 昭和の大横綱から平成の大理事長として生涯横綱を普通にやってのけた方です。私自身、思惟(しい)を抱いて想(おも)う。

 釈然としない時勢であっても真摯な力を失ってはならない!伝統文化を攻守せよ!その覚悟を身に受け、手を合わせるばかりです。

 昭和と平成にまたがり大横綱として君臨した理事長にご冥福をお祈り申し上げますとともに、伝統文化の在り方と相撲協会の名誉や地位向上を慮(おもんぱか)り、それを念頭に掲げ、その遺志を受け継ぐものの一人として公明正大な公益法人として誉れな基軸を個人として確立させてまいります。今後の角界がご加護を賜れますよう精進いたします。合掌

 貴乃花光司

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