テニスのツアー・ファイナルで見た精密スタッツ 観戦の一助に

[ 2015年11月25日 22:38 ]

リターンを返す錦織(AP)

 世界No.1のジョコビッチが最後までその強さを存分に見せつけ、今年の男子テニスツアーの幕が閉じた。

 最終戦のATPツアー・ファイナルは大会規模や賞金総額が注目されるが、メディアルームも300席近い巨大なものが用意されている。正面には3つの大型スクリーンが備え付けられ、左右に試合のライブ映像、中央はワンプレーごとに刻々と変化するスタッツを確認することができる。

 エースの数や第1サーブの確率、フォアハンド、バックハンド別の決定打や凡ミスの数などなど。試合後に配布される資料はさらに細かい。「0―40からのサービスキープ率」といったスコア別の得点率や、「ニューボールでの得点率」といったものまで一目で分かる。

 試合中のチャレンジで使われる弾道測定システム「ホーク・アイ」を生かし、ツアーはさらに詳細なデータも集めているようだ。公式サイトにアップされた分析記事では、1次リーグの錦織対フェデラー戦の数字が紹介されていて興味深い。

 フェデラーのベースラインからのストローク、バックハンドの割合がフォアハンドを上回ったのは1次リーグ3戦で唯一この試合だけだった。バックハンドの平均時速はフェデラーの101キロに対し、錦織はそれを上回る111キロ。錦織が軽快なストロークでフェデラーの弱みであるバックサイドを攻め、押し込んでいったことが分かる。

 錦織のリターンの打点位置によって、フェデラーの攻め方も見えてくる。外に向かって逃げていくワイドサーブ。ジュースコート(コート右半分、つまりフォアでリターンする)では錦織の打点の高さが1メートル27なのに対し、アドコート(コート左半分、バックでリターン)では1メートル43だった。フェデラーが高く跳ねるキックサーブで錦織のリターン力を封じようとしたのが、見た目の印象だけでなく、数字で裏付けられた。

 ここまで詳細ではないが、大会公式ページにもストロークやリターンの打球位置、サーブの配球を視覚化したものがアップされている。これらを観戦の一助とするのもありだろう。

 テニスに限らず、サッカー、野球、ゴルフ、ラグビーにいたるまで、今やあらゆるプレーが数値化される時代だ。数字にできないファンの後押しや、目には見えない人間心理などもスポーツの面白さ。しかし、技術の進歩はいつかそれも数値化し、一瞬のうちにデータ解析してしまうかもしれない。(雨宮 圭吾)

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2015年11月25日のニュース