棄権も想定内のパラリンピック種目 五輪との違い、そして課題は…

[ 2015年11月13日 09:30 ]

アジア・オセアニア選手権のニュージーランド戦で、ボールを運ぶ日本代表の池透暢主将

 千葉で行われた車いすラグビーのアジア・オセアニア選手権で「事件」は起きた。リオデジャネイロ・パラリンピックの予選を兼ねたこの大会。昨年の世界選手権優勝で、すでに出場を決めていたオーストラリアを除く、最上位国が本大会の切符を獲得する。参加国は日本、オーストラリアのほか、ニュージーランドと韓国の4カ国。つまり、2回戦総当たりの1次リーグでオーストラリアが決勝進出を決め、その対戦相手となった時点でリオ出場権が手に入ることになっていた。

 大会2日目だ。日本はオーストラリアを撃破し、韓国にも連勝。4戦全勝とした時点で、決勝進出は確実となった。この日の最終戦でニュージーランドを破ったオーストラリアも2位以上が確定…と思われた。ところが、である。国際連盟から派遣されていた技術代表は「大会が成立するかどうか分からないので、まだ何も決まっていない」と説明したので、メディアも「???」となった。

 というのも、残る1次予選2試合を棄権した場合、順位決定が変わるというのだ。直接対決はオーストラリアがニュージーランドに2戦全勝。星勘定で並んだとしても、直接対決の成績でオーストラリアが上位であることは間違いない。ところがここに「棄権」が絡むと、そのペナルティーが最優先というのがルールに盛り込まれていた。

 パラリンピックの団体球技は障がいの度合いによって分けられたクラスの合計が一定範囲内でなければならないケースが多く、単純に体調不良の選手の代替が効かない場合がある。五輪の球技ですら潤沢な陣容というわけにはいかないのが現実だが、パラの場合はその可能性が高い。つまり棄権は想定の範囲にあるというのだ。

 あらためめて五輪種目との違いを認識する一方で、これに対する配慮の必要性も感じる。将来的に「見るスポーツ」への変化を求めているならば、試合不成立は観戦者を失望させることになりかねない。それを回避するために、現状、五輪の4割程度の出場選手数を増やすことも考えなければならないのでは。現在、参加国数を五輪と同等に近づけようという努力は始まっているが、それに加えてゲームのクオリティーを高める努力もまた、必要になるような気がする。(首藤 昌史)

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2015年11月13日のニュース