内村 手本示した3冠締め「体操はやっぱり美しくないと」

[ 2015年11月3日 05:30 ]

鉄棒でも金メダルを獲得した内村(AP)

体操世界選手権最終日

(11月1日 英国・グラスゴー)
 キングがまた金字塔を打ち立てた。種目別決勝の鉄棒で、内村航平(26=コナミスポーツク)が15・833点で金メダルを獲得。世界選手権の金メダル数を10個の大台に乗せ、五輪を含めた世界大会の総メダル数24は日本最多の監物永三に並んだ。自身初の3冠で今大会を締めくくり、代表に決定している16年リオデジャネイロ五輪に弾みをつけた。女子床運動の宮川紗江(16=セインツク)は14・933点で4位。わずか0・067点差でメダルを逃した。

 各種目のスペシャリストが集う種目別でも、キングはやはりキングだった。自身19種目目、今大会のラストを飾る鉄棒で、内村が圧巻の演技を披露した。団体総合決勝で落下し、個人総合では構成から抜いたG難度の離れ技「カッシーナ」を決めるなど、出来栄えを示すEスコア(実施点)で8選手中トップ。美しく3冠を決め、大舞台を締めくくった。

 「体操はやっぱり美しくないと周りに影響を与えられないし点数にも表れる。世界一のチームであり、世界一の選手なので、自分が率先してやっていくべきだということを示せた。最後の最後に自分の演技ができた」

 団体総合も個人総合も制したことで安どしたのか、この日の練習会場で周囲はキングの異変を感じていた。「これまでと顔つきが全然、違った。気が抜けているような感じがしたし、そのまま演技してケガをするのが怖かった」と今井トレーナーは明かす。だが、選手紹介で入場すると、弛緩(しかん)した雰囲気は一変。「入場した時には目つきが違っていた。集中力が凄すぎる」と同トレーナーは驚きの表情を浮かべた。

 種目別では11年の床運動、13年の平行棒に続いて3つ目のタイトル。内村は団体、個人総合を終えた後の種目別では「疲労で体が意味分かんない状態」で演技する。そんな中、なぜスペシャリストに勝てるのか。「種目別の金はいつも運がいいんです」。今大会の鉄棒は、世界大会3連覇中だったゾンダーランド(オランダ)が不在。「本来ならゾンダーランドがいたし、この内容じゃまだ満足できない」。真摯(しんし)に体操に向き合う姿勢が、黄金の運を引き寄せる。

 「できれば五輪では3回以上、君が代が聞けるように頑張りたいけど、五輪はそんなに甘いものじゃない。代表も決まったし、リオに向かっていきたい」。04年アテネ以来の団体制覇、12年ロンドンに続く個人総合連覇、そして種目別のタイトルも。王道を歩み続けるキングは、どんな夢も現実に変える。

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