痛快無比の番狂わせ、スポーツに満ちあふれる強者を倒すヒント

[ 2015年10月4日 09:15 ]

ラグビーW杯で南アフリカを破り、笑顔の日本代表

 私は1メートル71の小柄な選手だった。男子バスケットボールでインターハイを目指していた高校時代はパニック発作に悩まされて出場時間は限られ、相手のエースをつぶすための“ディフェンダー”が与えられた唯一の役割。それでもドリブルしてくるなら最初の1歩目を狙ってスチールを仕掛け、リバウンドを争う際にはシューズを踏んでジャンプするのを妨害。背の高い選手がシュートを放ったら相手の顔の上に手を置いて視野をさえぎった。さすがに両目に指を突っ込んだ時にはテクニカルファウルをコールされて「そんなことやってはいかん」と注意されたがその忠告は実に正しい。これからバスケを始めようという人は絶対にマネしてはいけない。

 ただ一つだけ言えることがある。サイズや能力で劣っても、ちょっとした工夫があればスポーツでは同じ土俵で戦えるチャンスがあるのだ。私は審判にはにらまれたが、短時間であっても“いたずら”を繰り返している限り、試合の流れは悪くはならなかった。

 あれから40年。体力も走力も衰えてしまったが、山形県酒田市で開催されたシニア・バスケットボールの全国大会「八幡カップ(9月21~23日)」に参加してきた。私が出場したのはスーパーシニア(参加26チーム)と呼ばれる50代の部。ここ5年で2勝8敗だった我がチームの現状を考えると1次リーグ(3チームずつ)で敗退するというのが妥当な線だった。

 しかし全員が練習以上の力を出して頑張った。日本リーグ経験者のいるチームにもバスケの名門高校のOBで編成されたチームにも勝った。するとアドレナリンが出て、体の中で長い間“凍結”していたあのいたずら心がよみがえった。

 2次リーグ初戦は前年優勝チームとの対戦だったが、私のスキンシップ?にイライラした相手選手はボールをスチールされた後、私の足を引っかけて倒し「アンスポーツマン・ライク・ファウル」を宣告された。

 2点差の勝利。私の背後では別のチームの選手がありえない番狂わせ?を見て「マジかよ」とつぶやいていた。相手との平均身長差が8センチもあった4戦目では精も根も尽き果てて大敗。決勝リーグ進出にはあと一歩届かなかったが、バスケの名門校の出身とか実業団経験者が誰1人いなくて、なおかつ選手数が少なくてサイズの小さな我がチームにとっては痛快無比の3勝だった。

 ラグビーの日本代表が南アフリカを倒したように、スポーツには弱者が強者を倒すためのヒントが満ちあふれている。優勝なんかしなくても涙腺を刺激するような場面もどこかに転がっている。

 10月12日は体育の日。久しく体を動かしていない中高年の方、そろそろ“解凍”してみませんか?たぶん自分が思っている以上に熱くなるかもしれませんが…。(高柳 昌弥)

続きを表示

2015年10月4日のニュース