ラグビーW杯「日本不利」日程に思う 4年後はピッチ外の戦いも重要

[ 2015年9月30日 08:30 ]

スコットランドに敗れ、肩を落とすジョーンズ・ヘッドコーチ

 30分の2。

 ラグビーW杯、日本は9月19日の初戦で優勝2度の南アフリカを34―32で下した。英BBC放送がトップニュース扱いで映像を流し、現地各紙が総合面の1面で報じるほどの歴史的勝利の4日後、今度はスコットランドに10―45で完敗。この間、わずか中3日。分かっていたこととはいえ、強豪国に有利とされる試合日程は、現地でもさまざまな論議を呼んでいる。

 冒頭の数字は、W杯が5チーム4組のプール戦方式で行われるようになった03年以降の3大会で、プール戦(1次リーグ)で中3日の試合日程を含みながらも、準々決勝に勝ち上がったチーム数だ。30チーム中2チーム。確率にして6・7%。コンタクトスポーツのラグビーにおいて、いかに中3日の日程が不利かを実証する数字である。

 もちろん、額面通りに数字を受け入れるつもりはない。というのも、中3日の試合日程を強いられたのは、ほとんどがティア2と呼ばれる世界の第2グループのチームばかりだからだ。ティア1(イングランドなど欧州6カ国と、ニュージーランドなど南半球の4カ国を合わせた10カ国)で中3日を強いられたのは、03、07年大会のアルゼンチンとイタリア、11年大会のスコットランドの5例のみ。アルゼンチンはラグビーの世界では新興国で、スコットランドとイタリアもティア1の中では実力もW杯での実績も下位。過密日程を強いられずとも準々決勝進出の可能性が低かったという事実以前に、旧IRB(国際ラグビー評議会、現ワールドラグビー)の差別主義的なスケジュール作成が垣間見える事実が厳然と残っている。

 ちなみに30分の2の壁を見事乗り越えたのは、いずれも07年フランス大会のフィジーとアルゼンチンだ。前者は9月12日の初戦の日本戦に35―31と苦戦しながらも勝利した後、中3日のカナダ戦に29―16で連勝。この間、フランスのトゥールーズから英国(ウェールズ)のカーディフと、国境をまたぐ移動も強いられている。残り2戦は1勝1敗で終え、プール2位で8強入りした。後者は開幕試合でホスト国のフランスを17―12で破った後、中3日のジョージア戦も33―3で完勝。4戦全勝のプール1位で勝ち上がっている。移動はメーン会場のサンドニ(パリ郊外)から、約470キロ離れた南東部のリヨンだった。おそらくTGV(フランスの新幹線)で快適に移動しただろうが、いずれにしても約260キロの移動だった日本よりも長い。

 声高に叫ばれている「日本不利」だが、こうした前例があることは心に留めておく必要がある。そして今大会で日本の属するB組は、サモア以外の4チームが中3日の試合を含んでいることも記しておきたい。日本に勝ったスコットランドは、中3日で迎えた27日の米国戦に39―16で勝利し、強行日程を乗り越えた。米国は10月7日に南アフリカと対戦した4日後、サモア戦から中7日と休養十分の日本と対戦する。この試合で日本が有利なのは、火を見るよりも明らかだろう。この他、前回大会優勝のニュージーランド、オーストラリア、フランスとティア1の5カ国を含む、10カ国が中3日の試合日程を含んでいる。ワールドラグビーの幹部が「過去の大会と比べて最もバランスの良い日程になった」と主張するのも一理あると言える。

 それでも日本が強いられた優勝候補の南アフリカ、スコットランドとティア1国との中3日での対戦は、異例の厳しさだった。現行の1組5チームの方式を取る以上、日程のどこかにひずみが生じるのは避けられない。4年後の19年日本大会でも、抜本的な解決は見ないだろう。となれば、いかに自分たちに有利な日程を主催者に組ませるか、ピッチ外での戦いが重要になる。ホスト国として迎える4年後は、組み合わせ的にも有利な条件が日本に用意されると見られるが、その意味でも論議を呼んだ歴史的勝利の意味は大きい。(阿部 令)

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