ラグビーW杯で健闘の日本、エディーHC退任後に迫る“危機”

[ 2015年9月27日 10:10 ]

スコットランド戦の前半、モールを押し込みトライを決める日本代表

 10―45。スコアだけ見れば完敗だろう。だが、日本代表は強くなったと実感した。スコットランドとのラグビーW杯1次リーグ第2戦。反則やミスで流れを手放す場面がかなり多かったにもかかわらず、後半15分まで勝敗は分からなかった。

 03年W杯オーストラリア大会のスコットランド戦を思い出す。向井昭吾監督率いるジャパンは後半15分にWTB小野沢宏時のトライで11―15と詰め寄りながら、その後突き放されて11―32で敗れた。それでも伝統国にタックルの嵐を浴びせて奮闘した一戦で、海外メディアから「ブレイブ・ブロッサムズ(勇敢な桜の戦士たち)」と呼ばれるようになった。だが、21点差だった前回よりも、主導権を握った今回の方が勝機はあった。ほとんどアウェーの地で、レフェリーとの相性も悪かった(スコットランドと同じ英国系のアイルランド人起用はフェアと言えないのでは?)のに、本当に勝てそうだった。2戦を終えて1勝1敗。南アフリカから挙げた金星で世界も驚かせた。上々の1次リーグ前半戦だ。

 前回のコラム(9月6日付)で、日本代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチがW杯代表発表の際に「国際レベルの選手を育てるのは自分の仕事じゃない」と強調したことを紹介した。育てる側は、この発言についてどう思っているのか。国際級選手を輩出している数少ない指導者の一人、帝京大の岩出雅之監督は「そう言いながらエディーさんは一生懸命育ててきた」と付け加えつつ、「サッカーでは確かにそうだし、言っていることは間違っていない」と同意した。「各チームが育てないといけない。そして、全てのカテゴリーでつながりを持って、代表に多くの選手を送れる環境をつくらないと。これまでの日本代表は、監督が辞めたらご破算になっていた。帝京大も私が監督になってから20年率いて、積み重ねがあって今がある」。

 要は、各チームや指導者にばかり育成を頼るのではなく、日本協会が一貫した強化プログラムを整えて代表での取り組みを全国や下のカテゴリーでも共有し、継続していくシステムづくりが必要ということだ。確かにジャパンは強くなったし、有望な大学生を強化合宿に呼ぶなどエディーは育成にも力を入れてきた。しかし、日本協会は依然としてアンダー世代の抜本的な改革案、強化策を示せていない。代表に関しても「エディーにお任せ」の感が強く、その都度検証して他のカテゴリーの強化に生かしているというわけでもない。このままでは、指揮官退任後に4年間の積み重ねがあっさりリセットされてしまう危険すら感じる。 

 日本中が「プチ・ラグビー祭り」になっていた22日、秩父宮で行われた関東大学ラグビー。せっかくの好機を盛り上げるようなアナウンスは、何も聞かれなかった。そのまま国際試合に出場させて経験を積ませたい帝京大のメンバーが100点ゲームで圧勝する“もったいない感”を味わい、シーズン序盤なのに早くも芝の状態が危ういピッチを見てタメ息が出た。 (中出 健太郎)

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2015年9月27日のニュース