リオ切符目指す日本男子バスケ ベネズエラの“ケミストリー”に学べ

[ 2015年9月13日 13:17 ]

選手と抱き合って喜ぶベネズエラのガルシア監督(右)(AP)

 リオデジャネイロ五輪の出場権をかけた男子バスケットボールの米大陸予選(メキシコ開催=参加10カ国)で史上に残る番狂わせが起こった。2次リーグを6勝1敗の1位で通過したカナダは昨季のNBA新人王、アンドリュー・ウィギンス(20)、13年ドラフトの全体トップ指名選手だったアンソニー・ベネット(22=ともにティンバーウルブス)を含め先発5人が全員NBAに所属する“本気モード”のチーム編成。勝てば4大会ぶりの五輪出場となった準決勝(11日)の相手は、1次リーグで20点差で勝っていたベネズエラだった。

 ベネズエラにはNBA選手がいない。しかも12人中10人が国内リーグに所属。平均身長でも6センチ劣っており、下馬評でも圧倒的に不利だった。

 ところが20~24歳が主力のカナダに対して、29歳のグレゴリー・バルガス、34歳のジョン・コックスといったベテランが牙をむいた。残り0・3秒。オフェンス・リバウンドに飛び込んだバルガスが相手の反則を誘ってフリースローを1本決め、79―78で劇的な勝利。2次リーグで3勝4敗と負け越していた無名選手の集団がNBAの若手軍団を蹴散らして波に乗り、12日の決勝でも強豪アルゼンチンを下して優勝してしまった。

 油断とおごりは勝者を敗者に変え、英語で言うところのケミストリー(化学反応=卓越したチームワークの意味)が生まれれば、敗者を勝者にする道が開けてくる。試合終了直後、抱き合って歓喜するベネズエラの選手と、うなだれてロッカールームに引き揚げるカナダの選手の姿が印象的だった。

 出場枠が1つある男子のアジア選手権は23日から中国の長沙で開幕。日本は前回王者のイランと同じ組に入った。すでに女子は決勝で中国を下して五輪切符を獲得。制裁処分を科せられて一時は世界の舞台から消えた日本のバスケットボール界にとっては待ちに待った“朗報”となった。

 世界ランク47位の日本男子(イランは17位)にとって76年モントリオール大会以来となる五輪出場への道は果てしなく遠い。しかしベネスエラの奮闘を忘れないでほしい。絶望を希望に変える方法は案外、身近なところに転がっているはずだ。(高柳 昌弥)

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2015年9月13日のニュース