五輪を盛り上げる“鍵”メディアへの露出と練習はどちらが大事か

[ 2015年9月12日 09:35 ]

<世界陸上北京大会・2日目>男子20キロ競歩を途中棄権。インタビューを受け、涙をぬぐい、引き揚げる鈴木雄介

 メディアへの露出と練習はどちらが大事か。

 バスケットボール女子日本代表がアジア選手権(中国・武漢)を制し、04年アテネ大会以来、3大会ぶりの五輪出場権を獲得した。国内男子2リーグの統合問題が原因で、日本バスケットボール協会(JBA)は国際バスケットボール連盟(FIBA)から国際試合出場停止処分を科され、制裁が正式に解除されたのは8月9日だった。昨年11月の通告から約9カ月。“ハヤブサジャパン”が夢の切符をつかんだ。

 代表帰国後の懇親会で、川淵三郎会長は我々メディアに「かわいい子がいるでしょう。顔と名前を売って下さい」と“お願い”をした。会長の意図は選手らの知名度アップとバスケファンの獲得。「練習もあるが、メディアに出て、バスケの発展のためにやってほしい」。確かに、今は露出する絶好のチャンス。13年にアイスホッケー女子日本代表“スマイルジャパン”がソチ五輪切符第1号となった際も大いに沸き、一気にその名を知らしめた。しかし、その“お願い”を聞いたとき、一人のアスリートが頭に浮かんだ。

 今年3月に20キロ競歩で世界記録を樹立した鈴木雄介(富士通)だ。8月に世界選手権(北京)での金メダルが期待されたが、恥骨の炎症による股関節の痛みから、11キロ地点で棄権した。「練習を積むべき時に積めなかった。疲れを残したまま練習をして故障した」。鈴木は競歩をメジャーにするために多くの取材を受けた。使命感あってのことだ。しかし、その結果、練習不足を招き、歯車が狂ってしまった。

 五輪は4年に一度。選手たちは、その舞台での栄光を目指して、全てをささげる。スポーツの与える影響は大きい。そしてアスリートの発信する力も強い。五輪ではないが、11年サッカー女子W杯で“なでしこジャパン”が初優勝した際は、東日本大震災で被災した人々も含め、日本中に夢と希望を与えた。リオデジャネイロ五輪まで1年、20年東京五輪まではあと5年。「東京五輪の星」と呼ばれる有望選手たちの元には、すでに多くの報道陣が群がっている。

 もう一度言う。メディアへの露出と練習はどちらが大事か。日本選手団のメダル目標は金メダル30個、メダル合計80個。アスリートとメディアが本当の意味で共存できるかどうかが、母国開催の五輪を盛り上げる鍵を握るかもしれない。(後藤 実穂)

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2015年9月12日のニュース