中村美里が金1号!足技よみがえった 4年ぶり3度目女王

[ 2015年8月26日 05:30 ]

女子52キロ級決勝でキトゥ(下)を破り優勝した中村

世界柔道第2日 女子52キロ級

(8月25日 カザフスタン・アスタナ)
 女子52キロ級で中村美里(26=三井住友海上)が4年ぶりに女王に返り咲いた。決勝では昨年2位のアンドレア・キトゥ(27=ルーマニア)を足技で圧倒し、指導1の差で優勢勝ち。準々決勝からは昨年大会の3人のメダリストをなぎ倒した。ロンドン五輪後に受けた左膝の手術から復活し、09、11年に続いて3度目の戴冠。日本女子では谷亮子、阿武教子に次ぐ優勝回数となった。北京、ロンドンに続いて3度目の出場を目指す来年のリオ五輪にも大きく近づいた。

 今年の最初に中村がしたためた言葉は「確乎不動(かっこふどう)」(写真)だった。「毎年何かいい言葉がないか探すんですよね。何個か挙げて、うまく書けたやつにするんです」。今大会の出発前、三井住友海上の道場に飾られた書き初めを見ていた中村は言った。

 しっかりとした意志をもって動じないことを意味する言葉。しかし4年ぶりの世界選手権の畳の上で、苦労を乗り越えた足は、強い意志を備え、誰よりも多く、俊敏に動いた。

 準々決勝からはメダリストとの3連戦だった。昨年3位のクジュティナ(ロシア)には延長戦開始直後に小外刈りで有効を奪い、同じく昨年3位のミランダ(ブラジル)との準決勝は残り1秒で大逆転した。「とっさに出た」とそれまでの左ではなく右からの小外刈りでねじ倒すと、試合終了のブザーと同時に審判が技ありを宣告。「特に意識してなくて、気づいたら得意技になっていた」という代名詞の足技が道を切り開いた。

 一時はその足に不安を抱えていた。初戦敗退したロンドン五輪後の12年12月、09年から断裂していた左膝前十字じん帯の再建手術を受け、その1年後にボルトの除去手術も受けた。最初の手術の際には、現役を続けるとも辞めるとも決めていなかったという。しかし、リハビリの中で他競技の選手と知り合ったことが転機になった。30歳を超えて膝のじん帯を断裂してもなお五輪を目指すスキー・アルペンの清沢恵美子ら多くのアスリートと仲良くなった。ケガから復帰した選手の試合を見に行くと「次は美里の番ね」と言われた。「じゃあ見に来てね」。自然とそう答えられたことで、復帰に向かおうとする自分の意志に気づいた。

 「平気と思っていてもロンドン五輪までは少し意識していた。最近は膝を意識しなくなった」。決勝でも昨年2位のキトゥを小外刈りで何度もぐらつかせた。試合中盤に横四方固めで抑えながらも「逃してしまった」と反省したが、指導1以上に差を見せての優勢勝ち。表彰式では笑顔はなくとも「やっぱり表彰台の一番上はいいな」と静かに喜びをかみしめた。

 「北京は“勢い”。ロンドンは“全身全霊”。リオは“新鮮”ですかね。この4年間はいろんな経験をしてきたから」。目指すは3度目の五輪。「これまでの世界選手権とは違う新しい気持ちで戦えた」という今大会が、その目標に近づく大きな一歩となった。

 ◆中村 美里(なかむら・みさと)1989年(平元)4月28日、東京都八王子市生まれの26歳。小3から柔道を始め、小5から名門「相武館吉田道場」入り。相原中から渋谷教育渋谷高を経て三井住友海上に入社。16歳だった05年福岡国際48キロ級で、当時の世界女王ベルモイを破って優勝。「YAWARA2世」と呼ばれる。07年秋に階級を上げ、08年北京五輪の銅メダルで平成生まれ初のメダリストに。得意技は小外刈り。左組み。1メートル57。

続きを表示

この記事のフォト

2015年8月26日のニュース