星奈津美 苦しんでつかんだ金メダル…最初に出たのは感謝の言葉

[ 2015年8月22日 10:30 ]

金メダルを手に笑顔の星奈津美(AP)

 世界水泳選手権の競泳女子バタフライ200メートルで星奈津美(24=ミズノ)が金メダルに輝いた。帰国後、世界一になった自身へのご褒美を尋ねると「来年のリオで結果を出すまで、自分を甘やかしたくないんです。周りからは“車を買え”と言われるんですけど」とストイックな答えが返ってきた。笑いながら話す星だったが、来年のリオデジャネイロ五輪への決意の固さがひしひしと伝わってきた。

 12年ロンドン五輪。4月の日本選手権で2分4秒69をマークし、世界ランク1位で臨んだ。しかし、結果は2分5秒48で銅メダル。持ち味のラストスパートで、ラスト50メートルで2人をかわしての表彰台だった。

 「正直、本気で金メダルを狙っていたので、悔しい気持ちがないわけではないけれど、今は幸せです」

 それから3年、ついに世界一にたどりついた。11、13年の世界選手権は100分の1秒差で4位と勝負の世界の厳しさを味わってきただけに、喜びもひとしおだった。

 一歩ずつ階段を登ってきた。13年はレースの前半に重点を置き、苦手意識のあったスピード練習を積んだ。昨年は水をかく「プル」を向上させるために前腕の強化に着手。ウォールクライミングを取り入れた。国立スポーツ科学センター(JISS)にある、高さ10メートルの凹凸の壁を腕だけで登り切る。「お箸が持てないんですよ~」と苦笑いしつつも、「水をつかむ感覚が分かってきた」と声を弾ませていた。

 そして、昨年11月には甲状腺の病気「バセドー病」の手術を乗り越え、プールに戻ってきた。北島康介らを育てた平井伯昌コーチ率いる「チーム平井」の門を叩き、萩野公介(東洋大)、内田美希(同)ら日本のトップレベル選手とともに練習する毎日。「新鮮だし、自分が良いタイムで泳げたな、よしっと思っても、周りが凄く速くて、ビックリなんです!!」。目を丸くしながら、興奮気味に話す24歳の表情は輝いていた。

 苦しんでつかんだ金メダル。「感謝の気持ちを強く持って表現できるような泳ぎをしたかった」。最初に出たのは感謝の言葉だった。リオの舞台は1年後。星はどんなご褒美を選ぶのだろうか。(後藤 実穂)

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2015年8月22日のニュース