勝つゴルファーの隣には優れたキャディー 語源は家来でも…

[ 2015年8月20日 09:00 ]

大東建託いい部屋ネット・レディース最終日の18番、アイアンを手にレイアップする原。左は保科キャディー

 「キャディー」の語源は家来を意味するフランス語「カデ(Cadet)」とされている。けれども、現代のキャディーは決してゴルファーの家来ではない。ゴルフ規則では「規則にしたがってプレーヤーを助ける人」と定められている。そして勝つゴルファーの隣には例外なく優れたキャディーがいる。

 国内女子ゴルフツアー、大東建託いい部屋ネット・レディースを制した原江里菜(27=NEC)のキャディーを務めたのは保科隆さん(44)。真っ黒に日焼けした風貌。ゴルフ場でなければビーチが似合う。恐らく女性にもてるだろう。細やかな気配りができる大人でもある。そう確信する場面があった。

 最終日の18番パー5。原は1打差の首位でフィニッシングホールを迎え、1打目をフェアウエーに運んだ。池の向こう岸にあるグリーンまで177ヤード。5Wで十分に届く距離だ。2オンすればもちろん、ガードバンカーに入れたとしてもパーを拾うのは容易。池ポチャのリスクも分かってはいるが、7年も優勝から遠ざかっている美人プロは狙う気満々だった。

 「刻むべきだよね」と言いながら、納得していない。保科さんは「正解。今日は刻んでください」と返す。それでも原の目には迷いがあった。

 そこで男前キャディーは“小芝居”を打つ。「1回抜きます」と言うと、5Wを取り出してヘッドカバーを外してみせる。そして「はい。ありがとう」とクラブにお礼を言ってからバッグに戻した。その演出で原の心は静まった。レイアップして3オン2パット。パーで優勝を決めた。

 コンビを組んだのは2年前。保科さんは「2人で力を合わせて1億円プレーヤーになりましょう」と声をかけた。当時、原の年間獲得賞金は2000万~3000万円だったが、昨年は7000万円を超えた。キャディーはゴルファーを導く水先案内人。素敵な職業なのである。(福永 稔彦)

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