【佐野氏と一問一答】ショックも作品に自信「集大成」毅然と潔白主張

[ 2015年8月5日 11:58 ]

2020年・東京五輪エンブレムの“盗作疑惑”について会見を開いた、エンブレム制作者でアートディレクターの佐野研二郎氏と東京2020組織委員会マーケティング局長の槙英俊

 2020年東京五輪の公式エンブレムがベルギーの劇場ロゴなどと似ていると指摘された問題で、エンブレムをデザインしたアートディレクターの佐野研二郎氏が5日、東京都内で大会組織委員会マーケティング局長の槙英俊氏とともに記者会見した。佐野氏は“盗用騒動”について「ショック」などと率直な心境を吐露しながら、作品については「集大成」と自信。ベルギーの劇場ロゴとのデザインの考え方の違いなどをパネルを用いて説明。過去の“パクリ疑惑”などの厳しい質問にも、潔白を主張するように毅然とした態度で答えた。

 【佐野氏と一問一答】

 (冒頭のあいさつ)
 「このたびは東京オリンピック・パラリンピックエンブレムのデザインについて、盗用ではないかとベルギーのデザイナーの方からご指摘を受けたことにつきまして、大変驚いておりますが、全くの事実無根です。まず初めに誓って申し上げますけれども、今回の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムはアートディレクター、デザイナーとしてこれまでの知識や経験を集大成して考案し、仕上げた私のキャリアの集大成ともいえる作品だと思っております。自分が生きている時代に母国・日本でのオリンピック・パラリンピックの開催が決定し、1人のデザイナーとして大会エンブレムを制作するチャンスを得たことは大変光栄に思います。大いなる情熱をもって、このチャンスに挑み、ブラッシュアップを何度も繰り返して、世界に類のないエンブレムができたと確信しました。力を出し切って真にオリジナルなものができたからこそ、自身を持って世の中に送り出せるようなものになったんだと思います」

 (デザインのコンセプトについて)
 「このエンブレムでおしまいということではなくて、展開ということを1つの重要な要素として考えています。(エンブレム発表会時のプレゼンテーション映像を流す)。形を変え、文字になったりする展開が可能になっているエンブレムです。2020年までに、このエンブレムを起点にさまざまな形に展開をしていく、今までになかったアイデンティティーになっていると思います。A~Z、0~9(をエンブレムのデザインで表す)や、TOKYO2020のロゴを(エンブレムのデザインで)構築し直すと、こういうふうになったりとか(パネルを示す)。つまり、1つのエンブレムにとどまらず、どんどん展開できる猶予を残すような形で作成しました」

 ――世間の似ているという評価について。
 「ベルギーのロゴを見た時に、要素は同じものはあるんですけれども、デザインに対する考え方が全く違うので、正直、全く似ていないと思いました」

 ――騒動が起こって1週間。どういう気持ちで過ごしていた??
 「ニューヨークの事務所でこの報道を目にしまして。自分がデザイナーになって、オリンピックのエンブレムは夢だったんですね。なので、非常に喜んでいまして。当初から予定されていた出張に行った矢先に報道を目にして、非常に驚いたと同時に、ものすごいショックで。正直、結講つらいな、ということは思いました。ただ、自分はベルギーに行ったこともありませんし、ロゴも一度も見たこともありませんので、どうしてこういうことになってしまったのか、正直、分からないところもあって。かなり不安な時間を過ごしました」

 ――デザインの考え方の違いとは?
 「リエージュ劇場の方はTとL。こちらの方は正方形を9分割して作りました」

 ――ベルギーのデザイナーは「Pinterest」という、いろいろなデザインを見られるサイトにロゴをアップしており、それを見たのでは?と主張している。「Pinterest」というサイトは見たことがあるか?
 「見ておりません」

 ――結果的に偶然似ていたということになるが、似ていたということであればオリジナリティーに問題はないか?
 「一部分だけ取り出せば、似ているところはもちろんあると思いますが、全体を見ていただければ、それは全くない。オリンピックとパラリンピックのロゴが対で作られている今回のデザインですので、それは問題ないと思っております」

 ――結果として騒動になったことについて。
 「こういう事態になったことに対しては、非常に残念というか、寂しいところはあるんですが。この1週間はちょっと落ち込むというか、そういう時もあったんですけども、あらためて、この2つの東京オリンピック・パラリンピックのロゴを、自分がゼロから作ったものを見つめ直してみると、これ以上のものもない。自分の中でということだけじゃなくて、東京オリンピック・パラリンピックのこれからの活動とか、いろいろなものを集約していくエンブレムになった自信がありますので、何らその意志が揺らぐことはありません」

 ――インターネット上で佐野氏の過去の作品についても“パクり”の指摘がある。
 「そういった声があるとしたら、ものすごく残念なこと。私はアートディレクター、デザイナーとして、ものをパクるということは一切ありません。どのデザインも非常に時間をかけますし、自分の子どものように育てているつもりですので、そういったお話が出るのは非常に残念なことでもありますし、寂しいなということは感じます。ただ自分としては、もちろんいろいろなものに影響されるということは必ずあると思うんですよね、クリエイティブというのは。全くのゼロからというよりは、普段生活しているものとか、いろいろなことから影響されることはあると思うんですけれども、クリエイティブとして、そういったものに絶対してはいけないっていう定義は自分は持ってやっていますので。その誇りというか、それは忘れないでやりたいなと思っています」

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