手の内隠して天敵に敗れた日本代表 W杯本番でも欲しい“余裕”

[ 2015年7月26日 10:30 ]

24日(日本時間25日)のパシフィックネーションズ杯で日本は米国に敗れた

 ラグビー日本代表にとって、米国は天敵と呼べる存在だった。同格か、やや格下と位置づけられてきた相手にテストマッチ通算8勝13敗1分けと負け越している。古くは87年第1回W杯の1次リーグ初戦(オーストラリア・ブリスベン)で対戦し、割とイージーな位置からのプレースキックを外しまくって18―21で苦杯。「W杯苦難の歴史」の始まりだった。

 96年にはサンフランシスコで5―74の大敗。主将に就任したばかりのCTB元木(神戸製鋼)が悔しさで肩を震わせていた。03年の第5回W杯1次リーグ(オーストラリア・ゴスフォード)でも26―39。ジャパンはスコットランドとフランスに善戦するなど強豪との3戦を終えて疲労困憊(ぱい)の状態で、1試合消化の少ない米国とのパフォーマンス差は明らかだった。

 その後は5連勝していたが、第8回W杯イングランド大会の前哨戦と注目された24日(日本時間25日)のパシフィックネーションズ杯(PNC)で18―23と、12年ぶりの黒星を喫した。試合序盤と終盤に失点を重ねる姿は03年W杯とほぼ同じ。粘り強く自らの強みを出してくる相手にフィジカル勝負で後手を踏み、ミス連発が失点につながったシーンは、過去の負けパターンと一緒だった。

 過去と異なっているのは“想定内の負け”だったこと。W杯1次リーグでの対戦をにらんでエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチは当初から「手の内は見せない」と言い続け、事実、リーチ主将(東芝)ら一部の主力選手を使わず、W杯本番とは異なる戦い方を指示した。米国もベストメンバーではなく、相手の生命線である接点の強さで上回れなかったことは不安だが、手の内を隠す“余裕”を持って前哨戦に臨んだケースは、これまでになかった。

 第4回W杯(ウェールズなど)を4カ月後に控えた99年5月。平尾誠二監督率いるジャパンは、W杯本番でも対戦するサモアを花園ラグビー場で37―34と破った。No・8ジョセフとSHバショップという、この年に日本代表入りした元オールブラックス2人が活躍し、全力を出し尽くしての金星だった。ただ、あまりにも存在感のある2人が急に加わったことで、日本らしい速いテンポのラグビーは形が崩れ、本番では激しいフィジカル勝負を挑んできたサモアに9―43と粉砕された。

 今回のW杯でも米国戦は1次リーグ最終戦。南アフリカ、スコットランド、サモアとの3試合を終えて、チーム全体が100%のコンディションにあるとは思えない。カギを握るのは、前哨戦で全力を出さなかった“余裕”がプラスに働くか否か。慢心ではないが、本番では米国を見下ろすぐらいの余裕が欲しい。(中出 健太郎)

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2015年7月26日のニュース