新国立を“負の遺産”にしないため…建設後の費用にも注視必要

[ 2015年7月24日 11:00 ]

 新国立競技場の建設計画が振り出しに戻った問題は、海外のメディアでも大きく取り上げられた。米紙ニューヨーク・タイムズは18日付で「日本は20億ドル以上の値札が付いた五輪スタジアムをスクラップにした」という見出しを付けて報道。2520億円にまで膨らんだ建設費について「12年ロンドン五輪のメーンスタジアムの費用は3分の1。(新国立は)飛び抜けて最も高い五輪スタジアムで、おそらく歴史上最も高価なスポーツ施設になる」と伝えた。

 では、現時点で最も高価なスポーツ施設は何なのか。AP通信によると“世界一”は10年に米国ニュージャージー州に完成した「メットライフ・スタジアム」で16億ドル(1ドル=124円で約1984億円)。NFLのニューヨーク・ジャイアンツとニューヨーク・ジェッツの本拠地で、収容人数8万2500の巨大競技場だ。2位はNFLアトランタ・ファルコンズなどの本拠地となる「アトランタ・スタジアム」(17年完成予定)で14億ドル(約1736億円)、3位は大リーグ・ニューヨーク・ヤンキースの本拠地「ヤンキースタジアム」(09年完成)で13億ドル(約1612億円)、4位は12億ドル(約1488億円)で、サッカーの聖地と呼ばれる英国ロンドンの「ウェンブリー・スタジアム」(07年完成)とNFLサンフランシスコ・49ersの本拠地「リーバイス・スタジアム」(14年完成)。単純な比較はできないが、白紙となる前の新国立競技場の建設費は高過ぎると感じてしまう。

 心配なのは、新国立競技場が“負の遺産”になってしまうことだ。76年モントリオール五輪のメーン競技場建設における借金がすべて清算されたのは、実に30年後の06年。米スポーツ専門局ESPNによると建設費は当初5億ドル(約620億円)ほどだったが、維持費や野球場への改修費などを含めると、総コストは14億7000万ドル(約1823億円)に達したという。次世代にツケを回さないためにも、建設費だけでなく維持費など建設後の費用も注視しなくてはならない。(海外サッカー担当・大久保 尚文)

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2015年7月24日のニュース