玉鷲 外国出身最スロー初金星!日馬下した運動未経験力士

[ 2015年5月19日 05:30 ]

日馬富士(左)を突き落としで破った玉鷲

大相撲夏場所9日目

(5月18日 両国国技館)
 幕内・玉鷲が横綱・日馬富士を突き落として3勝目を挙げ、入門以来初めての金星を獲得した。30歳6カ月での初金星は外国出身力士としては最スロー記録。かつてはホテルマンを目指した“運動未経験力士”が得意の押し相撲で館内を沸かせた。優勝争いのトップは1敗の白鵬、平幕の魁聖、旭秀鵬を合わせて3人。2敗は日馬富士、稀勢の里、照ノ富士、高安、隠岐の海、阿夢露の6人となった。
【9日目取組結果】

 本来は「ホテルマンになるはずだった」という男が30歳を超えて初金星をつかんだ。玉鷲が得意の突っ張りで日馬富士を一気に押し込む。一度は懐に潜られかけたが、右からの突き落としで反撃。休まずに攻め続けると、土俵際まで押したところで相手の左足が土俵を割って勝負が決まった。30歳6カ月での初金星は年6場所制となった58年以降に初土俵の力士では6番目のスロー記録。外国出身では最も遅い。

 「普通の顔をしたいけど笑顔が出ちゃうな。こんな感覚なんだ」。優しい性格の持ち主は花道を引き揚げてから帰りのタクシーを拾うまで、ずっと笑みを浮かべていた。

 モンゴル相撲を経験したエリートが顔をそろえるモンゴル出身力士の中では圧倒的に経歴が異色だ。本格的なスポーツ経験はないまま、ホテルで働くことを夢見て母国の食料技術大に入学。1年半ほど料理や経営などを学んでいたが“2人の存在”が人生を変える。

 当時から体が大きく「今しかできないことをした方がいいのでは」と力士への思いも芽生えていた。その頃、東大大学院に留学中だった1歳年上の姉・ムンフゾロさんを頼って03年に来日。姉とともに両国を散歩していると、井筒部屋を通りかかった。外から稽古場をのぞいていると、既に入門していた鶴竜に声を掛けられて入門への橋渡しをしてもらったという。

 そんな運命的な出来事から12年が経過。「常に毎日同じように過ごすところが凄い」と尊敬する鶴竜は横綱まで昇り詰め、自身も遅ればせながら先場所、新三役となった。最近もiPhoneケースをプレゼントされるなど入門以来ずっとお世話になっている鶴竜は肩のケガで休場中。「絶対に喜んでいると思います」。3勝6敗と星は伸びていないが、苦労人にとっては大きな大きな白星だった。

 ◆玉鷲 一朗(たまわし・いちろう)1984年11月16日生まれ、モンゴル・ウランバートル出身の30歳。本名・バトジャルガル・ムンフオリギル。04年初場所初土俵、08年初場所新十両、08年秋場所新入幕。先代師匠(元関脇・玉ノ富士)の指導により入門当時から突き押しが得意。家族はエルデネビレグ夫人。1メートル89、166キロ。

 ▼日馬富士(玉鷲の突き落としで今場所2個目の金星配給)何も話すことはありません。一人になっていいですか(と断って報道陣に背を向け、髪を結ってもらう)

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