錦織 驚異の集中力、最後は「取りに行った」リターンエース

[ 2015年4月28日 05:30 ]

バルセロナ・オープンで連覇を果たし、トロフィーを掲げる錦織(AP)

男子テニス バルセロナ・オープン シングルス決勝

(4月26日 スペイン・バルセロナ)
 世界ランキング5位で第1シードの錦織圭(25=日清食品)が大会連覇を達成した。ノーシードで同66位のパブロ・アンドゥハール(29=スペイン)を6―4、6―4で下し、女子のクルム伊達公子を抜いて日本人で単独最多となるツアー9勝目。4大大会初制覇を狙う全仏オープン(5月24日開幕、パリ・ローランギャロス)に向けて、今季のクレーコート初戦を最高の形で滑り出した。

 「Estoy muy contento(とてもうれしいです)」

 表彰式ではスペイン語のひと言で場内の喝采を浴び、シャンパンファイトに酔いしれた。アフターパーティーでは、ボールキッズと一緒にクラブハウス内のプールへダイブ。今大会の恒例イベントで、錦織は身も心も連覇の喜びに浸りきった。

 「何となく重荷を感じていたし最初は硬さもあって良くなかった」

 順当に勝ち進んできた第1シード。勝って当然と目される世界66位との決勝が最も苦しかった。試合後に足をひきずっていたように「体も100%でなくて集中しきれていなかった」と明かす。

 両セットとも最初のゲームをブレークされ、追いかける苦しい展開だった。しかし、そこから逆転できるのが真のトップ選手の証でもある。「きょうは100点ではなかったけど、しっかり締めるところは集中できた」

 集中力の高まりは「どうやって終わったか覚えてない」という最後の3ゲームにはっきりと表れた。第8ゲームは鋭いリターンを連発してブレークバック。4―4に追いついた。第9ゲームは15―30と再び劣勢に立たされ、第1サーブがネットにかかった。ここまで何度も回り込まれてフォアの強打を浴びていたコート左側からの第2サーブ。錦織は勝負に出た。

 「今考えるとちょっと怖い選択だけど、たまには思い切っていくことも必要。我ながらよくやったなと思う」。スピンサーブで確実に入れにいくのではなく、ダブルフォールトのリスクも承知でスピンを抑えてあえてセンターを狙った。これが奏功し、このポイントもゲームも錦織が取った。

 第10ゲームで試合を決めたリターンエースも秀逸。「目をつむって打ったようなもの」と謙遜したが、冷静な読みが隠されていた。ダブルフォールトで転がりこんだマッチポイント。「そこまでストレートには1回しか打っていなかった。直前にダブルフォールトしたから、思い切りは打ってこない。早く試合を終わらせたかったし、取りにいった」。鋭く踏み込み、跳び上がってバックハンドを一閃(いっせん)。狙い通りに試合を決め、両手を大きく広げた。

 大会10人目の堂々たる連覇を、スペインの新聞は「Emperador(皇帝)」の見出しで報じた。「クレーでの連覇はうれしい。たくさんの自信と経験を得た大会。マスターズ、そして全仏でもいいプレーをしたい」。バルセロナに君臨する皇帝の覇権は、マドリード、ローマの大会を経て、全仏の舞台パリまで広がっていく勢いだ。

 ≪10人目快挙≫63回を数える大会で連覇は錦織が10人目となった。現行世界ランクが施行された73年以降はナスターゼ、レンドル、ビランデル、ゴメス、ムスター、ナダルの6人。その全員がキャリアの中で全仏オープンを制し、5人が世界No.1に上りつめている。バルセロナ・オープンと全仏オープンの同一年優勝はボルグやナダルら8人が達成。

 ≪勝率4位・839≫今季の錦織はツアー7大会で優勝2度、準優勝1度。準々決勝以上まで進めなかったのは1大会しかない。国別対抗戦デ杯を含めた戦績は26勝5敗。・839という勝率は20試合以上を消化した選手では4番目に高い。戦後の日本人で初めて定期的に世界を転戦する「ツアープロ」となった神和住純氏は「世界トップレベルにいるにはどんな条件でも実力を発揮しないといけない」と指摘。得意のハードコートに加え、クレーでも強さを発揮する姿に「今の充実ぶりなら、今後もさらにツアー優勝を重ねていくだろう」と期待した。

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