競歩・鈴木 世界新1歩目はTシャツ 中2から本格挑戦

[ 2015年3月26日 05:30 ]

転向のきっかけはご褒美のTシャツという鈴木

 きっかけは1枚のTシャツだった。陸上男子20キロ競歩で1時間16分36秒の世界新記録をマークした鈴木雄介(27=富士通)が25日、本紙の取材に応じ、競歩との出合いなどについて言及。18日には所属する富士通の社長賞を受賞しており、世界記録保持者として挑む8月の世界選手権(中国・北京)への意気込みも語った。

 世界最速ウオーカーが日本に誕生したのは今月15日。それから10日が過ぎた。「変化は取材対応があること。フェイスブックの申請が知らない人から数多く来た。なぜか外国人が多い。全部、承認はしている。隠すことも書いていないので」。鈴木は環境の変化にもしっかり対応している。

 陸上競技を始めたのは小学5年。中学も陸上部で、当初は長距離が専門だった。中2で本格的に競歩に取り組んだ。「中学2年のときに県大会出場が決まって、恩師の内田さんから“結果が良かったらTシャツあげるから”と当時は格好良く見えたTシャツに釣られてやり始めた。今にして思えば普通のTシャツ。中学生でワンポイントのものしか着てなくて、(派手めなデザインの)真新しいものを見て、何その格好いいのって」。県大会3位でもらったその“ご褒美”がなければ、世界新記録も生まれなかったことになる。

 日々、美しいフォームを模索する27歳。成長し続ける日本のエースを支えるのは探求心だ。「過去は振り返らず、新しいことばかり考えてる。友達と話したことも忘れるくらい、悪いことも良いことも忘れる。すぐに次に行けるのでいい性格だなと。治療とかトレーニングとか、深く考えずに取りあえず、やってみようとなる。今の課題はないけど、軽い力でうまく推進力を得られるフォームを追求している」

 順大陸上部では鈴木が1年の時に、箱根駅伝を沸かせた元祖・山の神の今井正人(現トヨタ自動車九州)が4年にいた。当時から世界で戦うことをイメージしていた。「今井さんが卒業するときの寄せ書きに“いつか一緒に五輪、世界選手権に行きましょう”とメッセージを出した。それが実現できて凄くうれしい」

 偉大な先輩とともに出場する世界選手権は優勝候補筆頭で迎える。「金メダルしか狙わない。世界選手権、16年リオデジャネイロ五輪、17年世界選手権(ロンドン)の3大会全てで金メダルを獲る」。世界記録保持者は世界大会でも頂点に立ち、真の王者であることを証明する。

 ◆鈴木 雄介(すずき・ゆうすけ)1988年(昭63)1月2日、石川県能美市出身の27歳。辰口中で本格的に陸上を始め、3000メートル競歩、5000メートル競歩で中学最高記録をマーク。小松高で世界ユース1万メートル競歩銅メダルを獲得した。世界選手権は20キロ競歩で09年大会から3大会連続で出場し、11年大会で8位に入った。12年ロンドン五輪36位。昨秋のアジア大会は2位。1メートル70、57キロ。

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