釜石でW杯!19年日本大会開催地決定「復興する姿を世界に」

[ 2015年3月3日 05:30 ]

釜石市がラグビーW杯の開催地に選ばれ歓声をあげる地元のファン

 ラグビーワールドカップ(W杯)を運営する「W杯リミテッド(RWCL)」は2日、アイルランド・ダブリンでの理事会で19年日本大会の開催地を決定し全国15の立候補地から岩手県釜石市など12会場を選出した。開幕、決勝の開催が決まっている東京都(新国立競技場)、大阪府東大阪市(花園ラグビー場)なども選出。日本選手権7連覇を果たした新日鉄釜石のホームタウンとして知られ、11年3月の東日本大震災では死者・行方不明者約1100人を出した釜石に、ラグビーの力を世界に示す舞台が用意された。

 伝説の地も歓喜に包まれた。決定の瞬間、パブリックビューイング会場の地元旅館に約100人の「釜石コール」が響いた。釜石シーウェイブス(SW)のファンが涙を浮かべ絶叫、小学生が大漁旗を振り、獅子舞まで踊るお祭り騒ぎ。釜石市の野田武則市長は「全世界の皆さんに復興する姿を見せながら、ラグビーを通じて支援への感謝を伝えたい」と喜んだ。

 スタジアム建設予定地は東日本大震災で津波被害を受けた鵜住居(うのすまい)小、釜石東中の跡地だ。総工費約27億円を見込み、常設1000席のスタンド以外は仮設で対応。約3万6000人の市民のうち、いまだ2000人が仮設住宅で暮らす複雑な住民感情に配慮した現実的な計画で、市のW杯誘致推進室の菊池拓也室長も「背伸びはしない」と説明する。

 それでも「夢」はある。観客席数1万6187人は大会ガイドラインで開催要件の最低ラインだ。日本戦はもちろん強豪国の試合も行えないが、菊池室長は「大会前に日本代表を呼べれば子供たちの夢にもつながる」と話す。スタジアムは18年に完成予定。こけら落としや大会前の壮行試合で日本戦を誘致できれば、国際大会の開催実績に乏しい市にとっては予行演習になり、本番へ向けた市の熱気も醸成できる。

 「そうなればいいし、合宿などで日本代表に活用してもらえればいい」と賛同するのは、現役時代は新日鉄釜石で活躍し、現在は釜石SWのディビジョンマネジャーを務める桜庭吉彦氏だ。第1、3、4回と3度のW杯に出場した同氏は「第4回のウェールズ大会の初戦はとても小さな会場だったが、記憶に残っている。独自の文化、地域性を生かすことが大切。釜石ならではのW杯ができる」と語気を強める。99年初戦のサモア戦が行われたレクサムは人口6万人程度の町で、会場も1万5500席と小規模。それでも素晴らしいW杯を開催できる――。桜庭氏の体験談も釜石開催の意義を強く後押しした。

 大会組織委員会の森喜朗副会長は「釜石は(選考過程で)点数も良かった」と内情を明かした上で「釜石でやるのは最高の復興の力になる」と言った。間もなく震災から4年。歓喜に沸いた「北の鉄人」のふるさとが、4年後、未曽有の震災を乗り越えた姿を世界に示す。

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