“山の神”今井、マラソンで覚醒!7分台で日本人最高7位 世陸当確

[ 2015年2月23日 05:30 ]

日本人最高位の7位でゴールする今井

東京マラソン

(2月22日 東京都庁~東京ビッグサイト)
 “山の神”が、ついに42・195キロで覚醒した。今夏の世界選手権(中国・北京)の代表選考会を兼ねた男子は、今井正人(30=トヨタ自動車九州)が自己ベストの2時間7分39秒で日本人トップの7位に入った。順大時代、箱根駅伝の山上りの5区で活躍したが、卒業後、マラソンではなかなか結果が出せず。10度目のアタックで日本歴代6位の好タイムをマークし世界切符を確実にした。エンデショー・ネゲセ(26=エチオピア)が2時間6分0秒で優勝した。

 かつて天下の険・箱根に降臨した神は“下界”で苦しんでいた。高低差の少ない42・195キロで結果が出ない。「まずいな、とは思っていた」。過去9度のマラソンは苦もんのフィニッシュ。「笑顔でゴールしたい」。最後の直線に入る前、サングラスを外した。険しい表情に少し笑みが浮かび、目は潤んだ。42・195キロで覚醒した今井が、言葉に実感を込めた。

 「長かった。やっと、ここまで来られた」

 参加は約3万6000人。国際テロ情勢が緊迫し、約1万人が警備に当たる厳戒態勢が敷かれた注目のレースで生まれ変わった姿を印象付けた。これまでは膝を高く上げるフォームだったが、年明けから股関節を意識。1月24日、合宿中の40キロ走で開眼する。「股関節を動かせば膝は上がる。一生懸命に膝を上げなくてもいい」。下半身の動きが改善されたことで、上体が力む悪い癖も消え、30キロ以降の失速を最小限に抑えた。終盤、2時間4分38秒の自己ベストを持つケベデを新走法で突き放した。

 順大時代、05~07年に箱根駅伝5区で2度の区間新を含む3年連続区間賞。3年間で20人を抜き去り、“山の神”と呼ばれた。卒業しても、その称号はつきまとった。沿道からは「今井!」ではなく、「山の神!」という声援が飛ぶ。「気にしていない」と言う一方で、「(学生時代を)超えられない自分もいる」と認めていた。「これで変わるのかな」。笑いながら、正直な思いを口にした。

 11年3月11日の東日本大震災から、もうすぐ4年。神が人の子に戻れる場所だった福島県南相馬市の実家は、津波に襲われた。1階部分は流され、保管していた箱根駅伝総合優勝のゴールテープも消えた。今は九州が拠点だが、福島は忘れない。今大会も地元関係者からもらった千羽鶴を、宿舎に持ち込んだ。「逆にこっちが力や勇気をもらっている」。激走が恩返しだった。

 2時間7分39秒は日本歴代6位。12年大会の藤原新以来、日本人3年ぶりの2時間7分台で、初の世界選手権代表を確実にした。「だいぶ遠かった代表に、近づいたかな」。今大会では強力な海外勢には太刀打ちできなかったため、「世界選手権に選んでもらえれば、今度はしっかり勝負したい」と気合十分。“山の神”に別れを告げた今井が、世界の頂にアタックする。

 ◆今井 正人(いまい・まさと)1984年(昭59)4月2日生まれ、福島県小高町(現・南相馬市)出身の30歳。原町高進学後に本格的に陸上を始め、3年時に全国高校総体男子5000メートルで5位。順大に進学し、2年時から3年連続で5区区間賞を獲得した。08年8月の北海道でマラソンデビューも10位。1メートル69、55キロ。

 ▼山の神 05~07年に箱根駅伝5区を激走した今井が元祖。東洋大の柏原は09~12年に区間新3度を含む4年連続区間賞で、“新・山の神”と呼ばれた。今年は青学大の神野大地が柏原の記録を超えるタイムで区間賞を獲得し“3代目・山の神”、または“山の神野”と呼ばれる。

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