白鵬 史上最速横綱600勝、天覧相撲で「後の先」試す余裕

[ 2015年1月19日 05:30 ]

安美錦(左)を引き落としで破った白鵬

大相撲初場所8日目

(1月18日 東京・両国国技館)
 大鵬を超える単独史上最多となる33度目の優勝を狙う横綱・白鵬は天皇、皇后両陛下が観戦される中、安美錦を引き落とし、ただ一人の全勝を守った。「後の先」の立ち合いを試す余裕の相撲内容で、自身が持つストレート給金回数記録も36回に更新。史上最速での横綱600勝も達成した。優勝争いは全勝の白鵬を、日馬富士と稀勢の里が1敗で追う展開となった。
【8日目取組結果】

 特別な日だからこそ特別な相撲を取ることを白鵬は心に決めた。「あえて“後の先”でいきました。天覧相撲ですから覚悟を決めていきました」。相撲巧者の安美錦に対して左手を前に出しながらフワッと立った。得意の右四つの型になれずに押し込まれたが、相手の動きをよく見て引き落とし。双葉山が極めた「後の先」とは立ち遅れているように見えながら最後は自らの形となって勝つ戦法。この日は成功しなかったが、抜群の反射神経で幕内唯一のストレート給金を果たした。

 天覧相撲は白鵬にとって、もちろん格別だ。10年前の05年初場所初日。両陛下の前で初めて幕内で相撲を取ったことをはっきり覚えている。「新小結で朝青龍関と対戦。かかとが出て、いい相撲を取れなかった。悔いが残っている」。がむしゃらだった当時の悔しさは忘れられない。

 10年の名古屋場所千秋楽。野球賭博問題で天皇賜杯が辞退された中で優勝し、表彰式で涙した。その直後、天皇陛下が「今後とも元気に活躍するよう願っています」という旨を話されたことが記された書簡が宮内庁から届いた。「(不祥事で)悲しかったし、寂しかった。それを一通の手紙が吹き飛ばしてくれた」。11年2月には八百長問題が起き、それ以降は天覧相撲もなかったが、書簡を励みにして土俵を務め続け、この日で最速横綱600勝を達成した。

 天覧相撲で不完全燃焼のまま朝青龍に敗れた19歳は、いまや「後の先」を試すほどの余裕を持つ横綱となった。19日は大鵬さんの2度目の命日。その日に逸ノ城と対戦が組まれ「楽しみな相手か?」と報道陣から問われると「それは君らが楽しみにしているだけじゃないの?」。若手の存在を全く恐れぬ姿に、33回目となる優勝の予感が漂っていた。

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2015年1月19日のニュース